テリー ハハハ、視聴者からすれば、文子も中田喜子も同じ人なんだよね。そりゃまあ、そうだけど。
中田 毎年、あの番組で節分の豆まきをやってるんです。第1シリーズがこれから始まるという時にやった時には、お客さんから「中田さーん!」って声がかかってたんですけど、第2シリーズ以降はもうシーンとしていましたから(笑)。本当にファンが離れていきましたね。
テリー 単発の2時間ドラマだったらまだいいけど、毎週流れるんだもんね。そりゃあ視聴者も刷り込みされちゃう。
中田 うちの姉が、私が出演する舞台を観に来てくれたことがあったんですね。終演後に姉が嫌~な顔で楽屋に入ってきたので「どうしたの?」って聞いたら、私が舞台に出てきたら、姉の隣のお客さんがもう芝居そっちのけで、「あの人はひどいのよ」って、ずっと「渡鬼」の話をしていたらしくて。最後まで私の悪口を聞かされたらしいです(笑)。
テリー それは災難でしたね。でも、それは役者冥利に尽きる話だよ。
中田 そうですね、テリーさんのおっしゃるとおりだと思いますね。
テリー 文子という虚構の人物を、本当に実在するかのように演じ切ったってことだからね。中田さんの演技が評価されてる証拠じゃないですか。
中田 いえいえ、私なんて「渡鬼」のメンバーの中では、本当に芝居が下手だと思います。橋田(壽賀子)先生のあの長ゼリフなんて、いつも苦労しましたから。
テリー 「渡鬼」といえば「長ゼリフ」っていうくらい有名ですけど、どのくらいあるんですか?
中田 普通のドラマで「今日は長いですね」っていう場合、台本の7ページか8ページぐらいなんですよ。
テリー それでも相当長いよね。
中田 ところが、「渡鬼」で「長い」っていう時は、だいたい22ページぐらいあるんですよ(笑)。
テリー ええ~っ!! 俺もこの前ドラマに出させてもらったんですけど、4行のセリフを覚えるのに2日かかったんですよ。それが20ページ以上って‥‥。台本は、収録の何日前に渡されるんですか。
中田 橋田先生は書くのが早いので、1カ月以上前にはいただいてるんですね。ですから、出ている皆さんは常にセリフを覚えている状況でした(笑)。
テリー 「長ゼリフを覚えなきゃ」っていうのが常に頭にあると、遊びに行っても楽しくないよね?
中田 ええ、私を含めてほとんどのメンバーが、バッグの中に「渡鬼」の台本を常に入れているって言ってました(笑)。
テリー 試験を控えた受験生みたいだ(笑)。そうすると、収録時にセリフを間違えたら現場の空気がスゴいことになるでしょう?
中田 第2シリーズぐらいまでは、13分の長回しシーンで途中で誰かがNGを出したら、最初から撮り直してましたので、それは心臓に悪かったです(笑)。
テリー 13分がもうすぐ終わるっていう時、最後のセリフの人が間違っちゃったりしたら悲惨だな~。
中田 そうなんですよ! 長ゼリフの人は用心しているので意外に間違えないんですけど、最後にひと言しかセリフがない人がミスするっていうことは、よくありましたね。
テリー そんなプレッシャー、俺には絶対耐えられませんよ。すごいなぁ。