安倍政権が盛んに訴えてきた政策のひとつ、「女性の活躍」の推進。9月の内閣改造では大コケしたものの、大臣にも女性を積極的に起用することでその姿勢をアピールしてきた。だが、現実的に女性の社会進出は進んでいるのだろうか。
実際に、総務省統計局の「労働力調査」で数値を見てみると、2013年1~3月の段階では、女性の就業者数は2658万人。2014年9月のデータだと2757万人だから、2年足らずで99万人の増加が見られ、就業者1.04倍に増えたということになる。
ちなみに、男性のほうも調べてみるとこちらも増えており、1.02倍となっていた。やはり、女性が活躍できる社会は実現されてきていると言えるのだろうか。
ところが、正規雇用・非正規雇用をそれぞれ見てみると、少し様相が変わってくる。2013年1~3月には、就業者のうち38.4%を正規雇用者が占めていたのが、2014年9月には37.7%とやや減少。
逆に非正規雇用のほうは、47.8%から48.5%に増えているのだ。
つまり、今でも、女性が正規雇用で働くのは厳しいというのが現実なのである。これについて、経済的に困難な子供たちに学習支援を行うNPO法人八王子つばめ塾に話を聞いてみると、
「出産、子育てなどで仕事を離れたまま職場復帰ができなくなってしまったお母さんたちは多い。そうした方の中には、能力ではなく時間の切り売りをして働くようになるケースが非常に多くなるんです」(代表・小宮位之氏)
つまり、長く働くほど稼げるという働き方に切り替わるということである。そしてその働き方は、子供にも影響を与えるという。
「特にシングルの家庭に見られることですが、学費をはじめ子供の教育費を稼ぐために、夜遅くまで働くお母さんが増えています。すると、子供は家で勉強のことを気にかけてもらえない。普段から親に宿題や自習をコントロールされている子供たちと、学力の面で格差が出るということにもつながってしまうんです」
学力格差が開けば、当然のようにその子供たちの経済格差にも繋がっていく。悲しいかな、学歴社会は日本の中でまだ根付いているのが現状だからである。
女性の雇用問題は、その子供たちの雇用問題でもあり、ひいては未来の日本人全体の雇用問題でもある。最近では、「子供を育て上げるだけの経済的な自信がないから、子供は産まない」「今の仕事、地位を手放したくないから、産まない」と決める既婚女性も多いという。
女性の活躍とは、具体的にどういう姿を指しているのか。それによって日本はどう変わるのか。今月の衆院選に向けて、各党には明確にしてもらいたいものだ。
取材協力/NPO法人八王子つばめ塾( http://hachiojiswallow.com/ )