まさに影武者のオンパレードだったようだ。
7月21日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第95回ではヒロインのアキ(能年玲奈)が、母親・春子(小泉今日子)が隠し続けてきた秘密を知ることになった。
それは若き日の春子(有村架純)が女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の代役として、デビュー曲の「潮騒のメモリー」をレコーディングしていたこと。音痴過ぎるひろ美では作品として成立しないことから、事務所マネージャーの荒巻(古田新太)がアイドル志望の春子を“影武者”として起用したのである。
ひろ美と入れ替わるようにスタジオ入りした春子。気持ちを落ち着かせて歌い出すと、その美しい歌声にレコーディングのスタッフは大喜びだ。影武者としての役割を見事に果たした春子だったが、実はこの場面にもうひとつの影武者が隠れていたという。
「若き日の春子を演じる有村架純が歌い出すも、流れてきた歌声は彼女のものではありませんでした。実際に『潮騒のメモリー』を歌っていたのは、母親になった春子を演じている小泉今日子だったのです。この場面には《春子がひろ美の影武者として歌唱》という虚構と、《小泉が有村の影武者として歌唱》という現実が入り乱れていたのです」(テレビ誌ライター)
さらに言えば有村自身も、小泉の影武者を務めていると言える。昭和らしいレイヤードの髪型でアイドルの卵として振る舞う有村の姿は、若き日の小泉にそっくり。この場面にはなんと3つの影武者が同居していたのである。
それに加えてこの日の物語には、もう一つの影武者も描かれていた。それはヒロインのアキ自身だというのだが…。
「アイドルグループ『アメ横女学園』の下部組織にあたる『GMT6』で活動しているアキ。彼女はアメ女のセンターだった有馬めぐ(足立梨花)のシャドウを務めていました。めぐは前年末の国民投票でセンターの座から陥落し、ステージに立てない“奈落組”としてアキと同じ立場となりましたが、里帰りから戻ってきたアキに対して『またシャドウやってもらうからさ』とライバル心を剥き出しにしていたのです」(前出・テレビ誌ライター)
シャドウとはレギュラーメンバーが怪我や病気でステージに立てないとき、そのポジションを埋める役割。すなわちアイドル界における“影武者”のことだ。
GMT6で、めぐの影武者だったアキ。その姿は春子がひろ美の影武者として歌っていた姿が25年の時を経て再現されたも同然ではないだろうか。
果たして影武者の娘であるアキは、母親の春子と同様に影武者のままで芸能人生を終えてしまうのか。それとも表舞台で輝く存在へと成長できるのか。視聴者はそんな心配と期待の両方を抱いていることだろう。