小林虎之介を初めて意識したのは、昨年10月期放送の「下剋上球児」(TBS系)で演じた赤髪の日沖壮磨を演じている時だった。
自分が起こしたケンカ騒動の責任をとって、兄・誠(菅生新樹)が出場を辞退した試合で敗退した越山高校野球部を見て、中学時代はクラブチームで正捕手をしていた壮磨(小林)は頭を丸刈りにして1年生の秋という半端な時期に入部。この壮磨役が実に良かった。
今年4月23日放送の「PICU 小児集中治療室 スペシャル2024 」(フジテレビ系)では、大病院の御曹司で、いけ好かない研修医・瀬戸廉が成長して変化するプロセスを好演。前クール放送の深夜ドラマ「ひだまりが聴こえる」(テレビ東京系)では、冒頭の「下刻上球児」でバッテリーを組んでいた仲沢元紀とW主演。最終回で友情だと思っていた気持ちが恋だと気付く太一役を見ながら、くすぐったい気持ちと同時に、大好きだった「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」(テレビ朝日系)第22話で電磁鬼に襲われる豪田デジタルホールディングスの社員・今井役を演じていたことに気付いた。
活きのいい若手役者は、いわゆる戦隊モノや特撮モノに出演することが多いけれど、小林はこの時の「ドンブラザーズ」で、変身しない社員役を演じたのみ。これから戦隊モノや特撮モノに出演する感じがしないから、次回作はどんなものだろうかと思っていたら、放送中の窪田正孝主演ドラマ「宙わたる教室」(NHK)で、舞台となる東新宿高校定時制に通う、金髪のディスレクシア(識字障害)を持つ柳田岳人として発見。めっちゃええやん!とウソ関西弁が出てしまうくらいハマリ役を演じている。
性格的には「下剋上球児」で演じていた壮磨の要素が強そうな岳人は、ごみ収集の仕事をしながら定時制に通う21歳。10月8日放送の第1話では、連立方程式の計算問題はパーフェクトに解けるのに、文章問題には手をつけることさえしない岳人(小林)の答案用紙を見た藤竹(窪田)は、岳人が学習障害の1つである「ディスレクシアではないか」と見立てる。
それを聞かされた岳人は激しく動揺。「何でオレに(ディスレクシアであることを)教えたんだ!結局“不良品は不良品”ってことだ!」と泣きながら藤竹に食ってかかるシーンが描かれ、岳人として複雑で深い悲しみをストレートに伝えてきた小林の演技力に、次世代主演俳優になるだろうことを強く予感した。
最終的にきちんとした診断を受けた岳人はディスレクシアと診断され、藤竹との心の距離が縮まる。さらに岳人は、理科教師の藤竹が創設しようとしている科学部の部員第1号となるのだ。
騙されたと思って「宙わたる教室」を見てみてほしい。小林の演技もさることながら、ドラマとしてもめっちゃええよ。
(森山いま)