成長するのは登場人物だけではなかったようだ。
再放送中のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」では、4月18日放送の第14回にてヒロインの天野アキ(能年玲奈)が危うく溺れ死ぬことに。海女仲間に無事に救出されたものの、祖母で海女クラブ会長の夏(宮本信子)は「海女失格だ!」と激怒していた。
そんな夏に、母親の春子(小泉今日子)は「危ない目に遭って学ぶことがあるってあなた、このあいだ言いましたよね!?」と反論。夏のほうも返す刀で、アキが海女になりたいと言ったときに春子が反対していたと指摘。
そんな春子と夏の口げんかに、アキは混乱。自分のせいで母親と祖母がケンカしてしまったと後悔していた。その場面に感慨を覚える視聴者が続出していたという。
「娘のアキを巡って母親と祖母が口論するこの場面を巡り、本放送から10年経ったことで、見方が変わったことに気づく視聴者も少なくなかったのです。視聴者自身が成長したことにより、かつてはヒロインのアキを中心にドラマを楽しんでいた視点が、いつの間にやら春子の視点になっていることに気づいたワケですね」(女性誌ライター)
この場面をアキを中心に見れば、自分の失敗が原因で母親と祖母を仲違いさせたことを悔いている姿を描いている。
一方で春子の視点に立てば、アキの失敗はあくまでフックに過ぎず、祖母の夏に対して抱き続けてきた不満があらためて爆発した形だろう。
さらに夏の立場からは、自分勝手に北三陸から東京に家出した娘の春子と同様に、孫のアキも自分勝手に入り江の外に出て溺れてしまうことに。自分の、そして北三陸のルールからハミ出した者に対するイラ立ちが現れた場面だったのではないだろうか。
「三者三様の感情が入り混じるなか、観る側にとっても誰の立場に立つのかで、この場面が示す意味は大きく変わってきます。10年前にアキの視点で観ていた視聴者は、今回の再放送で自分が春子の視点に立っていることに気づき、自らの変化に驚いていたわけです。このように10年の間を置いた再放送には、ドラマを別の視点で味わい直す効果がありました」(前出・女性誌ライター)
かつてはアキ(能年)の気持ちで観ていた世代が、10年後の今では母親・春子(小泉)の気持ちになることができた。きっとさらに10~20年後には、祖母・夏(宮本)の気持ちが実感できるようになるのかもしれない。