「私にできることは前を向くことだけ」
女子テニスの加藤未唯(ザイマックス)がSNSに英語でこう綴ったのは6月15日。パリで行われた全仏オープン女子ダブルス3回戦で失格になったことを不服とし、賞金とポイントの回復を求めるも認められなかったと報告した。
この問題を巡っては、アメリカのテニス専門サイトが相手組の重大な“ルール違反”を指摘するなど、余波が続いている。そんな中、元衆院議員でタレント・杉村太蔵が6月11日放送の「サンデー・ジャポン」(TBS系)に生出演して言及した内容が物議を醸している。
改めて騒動を振り返っておくと、加藤は、問題の3回戦、第2セットでプレイが途切れたタイミングで、相手コート側に返球すると、ノーバウンドでボールガールに直撃。涙を流す少女に歩み寄り謝罪した加藤には、いったん警告が出されるも、最終的に危険行為との判定が下され、失格扱いとなった。加藤は再三にわたって「故意に当てたわけではない」と審判に主張したが、判定は覆らず、それまでの賞金およそ645万円も没収されることになったというものだが、「サンジャポ」では、テニスの国体優勝経験を持つ杉村がこの騒動について解説を求められこう語ったのだ。
「いろんな意見があると思いますけど、スポーツ事故を無くすという観点で解説すると、ボールを渡す時は、必ずアイコンタクトをしてから、“今からあなたにボールを渡しますよ”って了解を得て、相手の手前でワンバウンドかツーバウンドさせる。ましてや、今回は相手が小さい女の子でしたから、必ず取りやすいようにやるのが、ルールというよりマナー」
つまり、加藤にとっては厳しい判定ではあるものの、「大会全体をマネジメントする責任者からすると、“あれは危険行為、失格”と判定が出てしまうのは仕方ないんじゃないかな」と語ったのだった。
しかし、世間からは、この杉村の“薄口解説”に「論点がズレている」との声が集まった。
「というのも、ボールガールにノーバンで送球した加藤の振る舞いが“危険行為”であるとの考えはみな一致しているんです。この騒動が世界中に波紋を広げているのは、“危険かどうか“でもなければ、“故意かどうか”という理由でもなく、なぜ当初の判定が覆ったのかという点です。初めに審判は加藤の送球を危険なものではあるものの、“故意ではなく、少女もケガはしていない”との理由から、警告のペナルティで終わるはずでした。しかし、対戦相手がレフェリーに執拗な猛抗議を続け、途中からスーパーバイザーが介入し、“危険行為による失格”へと判定が覆されました。加藤サイドをはじめ、世界中のテニス関係者が憤慨し、疑問視しているのはこの部分です。よって、騒動を“スポーツ事故の観点から危険です”との解説に留めた杉村には『問題の根本はそこじゃない』『一度決まった裁定が選手の抗議で変わったことが問題視されてる。論点がズレてる』との声が見られました」(テレビ誌ライター)
不屈の精神で、最後は混合ダブルスで見事優勝を遂げた加藤。欧州メディアからも“行き過ぎたペナルティ”などと擁護する見方が強まり、その情勢が注視されていたが、結局判定は覆らなかった。結果的に、杉村の解説も意味はあったと言えそうだが、今回の騒動を教訓に、今後は選手の抗議で理不尽な結果がもたらされないようになってほしいものだ。
(木村慎吾)