TBSで数多くのヒットドラマを制作してきた磯山晶氏が、配信動画サービスのNetflixと5年間にわたる契約を締結したと発表したのは、さる7月11日のことだった。
磯山氏は今年6月にTBSを退社すると自身の会社を設立し、すぐにNetflixと合流。しかも、Netflixへの「移籍」1作目は、脚本家・宮藤官九郎氏とタッグを組み「これまでにないスタイルのシリーズ」を企画すると公表している。この磯山氏の動向に、頭を抱えているのがTBS上層部だという。
「退社後のNetflix合流は想定の範囲内でしたが、宮藤氏を押さえられてしまったのは痛手でした。宮藤氏はこれまでTBSでは磯山氏の専属のような扱いで、今後は宮藤氏のドラマは作りにくくなるでしょう。しかも、今年は磯山氏と宮藤氏がタッグを組んだ『不適切にもほどがある!』がヒットしたばかりですからね」(民放関係者)
キー局の編成担当が、内情をさらに補足する。
「宮藤氏は、磯山氏がプロデュースしたTBS系ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)が脚本家としての出世作となりましたし、その後、2人が組む形で、『木更津キャッツアイ』(02年)、『タイガー&ドラゴン』(05年)、今年の『ふてほど』までヒット作をTBSで次々と生み出しています。TBSでは磯山氏は宮藤氏の脚本作品の全てでタッグを組んでいて、宮藤氏は磯山氏を恩人として尊敬しており、宮藤氏への連絡も磯山氏が直接していたようです。それだけに、TBSは宮藤氏とのパイプを失ったに近い形になり、宮藤氏がTBSでドラマを制作することが減りそうな情勢です」
そんなTBSは、“磯山ショック”を乗り切るために、ある秘策を水面下で進めているという。それが、昨年大ヒットした同局日曜劇場「VIVANT」の続編だというのだ。「VIVANT」は来年の放送に向けて続編を制作中だとされ、ドラマだけでなく劇場版も一緒に制作するという情報がテレビ業界で飛び交っているが、何でも売上だけでなく、TBS社員の士気を上げる意味も少なくないのだとか。
「名物社員の磯山氏が抜け、Netflixとの契約では会社員では考えられないような契約料を得たそうですから、TBSの若手社員の士気はかなり低下していて、配信サービス会社への転職を考えている人も増えそうな気配といいます。特にドラマ部門は引き締めが必要となり、大ヒットが見込める『VIVANT』プロジェクトを“磯山ショック”を脱する意味でも絶対成功させたいとTBSの上層部は考えているようですよ」(スポーツ紙記者)
そんな「VIVANT」新作は、前回同様に徹底した情報規制が敷かれ、制作が進められているという。
「『VIVANT』を手がけたTBSの福澤克雄監督を筆頭に、数名の若手のプロデューサーを入れて上層部にも内容を明かさない厳戒態勢を敷いているそうです。ロケはドラマと劇場版を一気に撮ってしまうようで、今回も海外ロケをふんだんに行うらしい。主演は同じく堺雅人ですが、他の出演者は総入れ替えになるという噂もあり、TBSでも一部の人間しかスケジュールが共有されていないとか」(前出・民放関係者)
磯山氏の離脱で揺れ動くTBS。「VIVANT」の続編を製作することで、社員の心を一つにし、往年のような「ドラマのTBS」を再興させることはできるか。
(渡邊伸明)