5月27日に最終回を迎えた桜井ユキ主演ドラマ「しあわせは食べて寝て待て」(NHK)。
心も身体もバリバリに健康でなくてもいいじゃないか。
地味だけれど腹の底から温まるお粥でも食べて、今晩は丸くなって寝ちゃおうじゃないか。
自分をかわいがって甘やかすことはちっとも悪いことなんかじゃない。
ダメな自分を再確認しながらも、そんな自分を肯定できるきっかけをくれる珍しいドラマが、この「しあわせは食べて寝て待て」だったのではないだろうか。
前週の5月20日放送の第8話では、うずらさん(宮崎美子)の部屋に招かれたさとこ(桜井)は、うずらさんが早期退職後、自由気ままな生活を送りながら、趣味で曲作りをしていると聞いて大共感。「お金のために無理して働いて、体壊して、その治療代にお金払うなんて、何か違いますよ!」と率直な気持ちを言葉にしていたが、この言葉が胸に響いた人は多かったように思う。
さとこは一生付き合わなければいけない病気にかかったことで、それまでの生活がガラリと変わり、たとえば「薬膳」に興味を持つようになったキャラクターだ。
ドラマの中では誰にでも試すことができそうな「薬膳」の知識が紹介されていたが、このドラマ自体が「薬膳」のような働きをしてくれていたから、最終回が終わった今、視聴していた者たちは皆、心や身体に不調を感じ始め、「続編」という「薬膳」を求めているのではないか。そんな仮説が胸に渦巻いている。
宮沢氷魚演じる司が、家族ではない鈴さん(加賀まりこ)やさとこ(桜井)が住む「団地」に「ただいま」と戻ってくるラストシーンを見て、腹の底から温かい気持ちになった人が、きっと多いことだろう。
最終回の第9話がスタートして11分ほどが経った頃、さとこが左側に集会所の見える公園を歩いていると、網戸を持った2人の女性とすれ違うシーンがあったのだが、実はこの2人の女性が「ノエチとなっちゃん」だったことに気付いた人はどれくらいいるだろうか。
「ノエチとなっちゃん」とは、昨年9月1日から11月3日までNHK BSおよびNHK BSプレミアム4K「プレミアムドラマ」枠で放送されたドラマ「団地のふたり」で、小泉今日子が演じていた太田野枝、小林聡美が演じていた桜井奈津子のことだ。
「団地のふたり」も「しあわせは食べて寝て待て」も、東京都東久留米市にある「滝山団地」がロケ地で同じだったことから、「見る人が見ればわかるちょっとした遊び」を仕込むことができたのだと思う。最終回の序盤でこの2人を見つけられた人は、ちょっとしたご褒美をもらったような気分を味わえたのではないだろうか。
5月24日放送の「しあわせは食べて寝て待て ありがとうSP」(NHK)では、主役の麦巻さとこを演じた桜井が小声で「シーズン2とかあるといいよね」と言うと、隣に座っていた白羽司を演じた宮沢が、すかさず「ねぇ。やりたいですね」と応えていたから、「続編」はおそらくあるだろう。視聴者だけでなく演者も「続編」を望んでいるのだから、やらない手はないよね、NHKさん。
「続編」は食べて寝て待て。
(森山いま)