今回は、「将来を夢見る“夢”」と「ホルモン」の話です。
■ホルモンが“快感”を体のすみずみに届ける
ホルモンは100年以上前に発見されました。「刺激する」「呼び覚ます」という意味を込めて名づけられました。ホルモンは単なる化学物質ではあるのですが、情報伝達という不思議な働きをします。いろんなホルモンが、体の様々なところから分泌され、体のすみずみまで運ばれます。そして、私たちのあらゆる生命活動や精神活動をコントロールしています。現在、100種類以上のホルモンが発見されており、私たちの成長や生命維持に重要な役割をはたしています。
意識的に“晴顔”で生きることで、エンドルフィン(幸せホルモン)やドーパミン(快感ホルモン)やセロトニン(癒やしホルモン)などの“善玉”ホルモンがピュンピュンと分泌されます。そしてその善玉ホルモンは、体中をめぐり、幸せ、快感、癒やしなどの情報を伝えます。その結果、私たちは、“心”は幸せ、“体”は元気で生きていくことができます。
■中でも、“夢”との関係でいえば、ドーパミンが主役
ドーパミンを分泌しているのは、脳の下のほうにある「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」というところです。ここは食べ物、睡眠、生殖、お金、名誉などの“快感情報”をゲットして、ドーパミンを出し、その情報を体中に伝えます。腹側被蓋野は、ドーパミンの発信場所として重要な場所です。そこで「ドーパ発信局」という理解しやすい名前で、今後は呼びたいと思います。
ラットに砂糖水などの“ご馳走”を与えると、体内のドーパミンレベルは急上昇します。人間も同様、おいしいものを食べたり、テレビゲームでコインをゲットするたびにドーパミン値が急上昇し、快感を全身に伝えることが確認されています。さらにドーパミンは“もっと欲しい”という情報も発信します。その主要な伝達先は、快感の領域にある「側坐核(そくざかく)」と「前頭前野(ぜんとうぜんや)」です。
側坐核は、やる気を起こすところ、前頭前野は計画を立てるところで、「ドーパ発信局」と太いパイプでつながっています。その太いパイプから、ドーパミンの快感情報を受けとって、「夢実現のモチベーションを引き上げ」て、「夢実現の計画を立てる」のです。
この一連のつながりは、一般に「ドーパミン報酬系」と呼ばれています。「快感を受けとり、次なる快感(報酬)を求める」というドーパミン報酬系の活動は、巧妙に仕組まれた生物の「生き残りの戦略」の一つ」なのです。
■“夢”がなくては、ヒトは生きていけない
食事、睡眠、生殖、狩りなど「生き残るために必要な行為」には必ず “快感”が伴うようにセットされています。ヒトは、その快感を追い求め、結果的に、生き残りの確率を高めているのです。
就寝中に見る“ゆめ”ではなく、将来を夢見るほうの“夢”も、人類が生き残るためのとても重要なアイテムですから当然、“夢”を思い描くことには“強力な快感”が伴います。
■“夢”は上昇スパイラルで舞い上がっていく…
人は“晴顔”で未来に実現したい“夢”を見て、“晴顔”によってモチベーションをどんどん上げていき、“晴顔”によって、“夢実現”の計画を立てます。このようにして一つの“夢”が、実現した後は「またまた、ドーパミンが“次の夢”作りをうながし、そしてそれが実現していく」のです。
この上昇スパイラルは、人が“晴顔”で生きていく限り、次から次へと続いていきます。こうして人類は、進歩してきたのです。人類にとって“夢”は特別、重要な「生きるためのベストアイテム」なのです。
次回から、“晴顔”が“夢”を叶えるプロセスを見ていきます。あなたの夢を叶える方法が見えてきます。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」