今回は、2つの実験を通して、脳が“夢”を実現するプロセスを体験してみましょう。人間の脳は、「時間を前に進めて」夢実現の計画を立てるのです。
■“顔”が“夢”を作ると脳は…
「脳は、意識的に“晴顔”で生きることで分泌されるドーパミンが出た場面を学習する。そして、再びドーパミンを得るために、学習した場面と類似の行動を起こす」ことが知られています。
そしてドーパミンが伝える「夢という“快楽情報”」を受けとった人間の脳(大脳皮質)は、なんと「時間を“未来”に進め始める」のです。これは人間の脳にしかできない特別な活動です。
■それではここで“実体験”コーナー
まず、第1のミッション。
「あなたの明日一日の予定はどうなっていますか?朝起きてから順番に挙げてみてください」。あなたが、会社勤めの方だったら…。
「明日は木曜日だから、会社で朝ミーティングが9時からある。だから、7時に家を出て、いつものルートで出勤。朝ミーティングの後、部課長会。昼食は会社前のお店でラーメン。午後は、新製品をもって得意先まわり。早く終われば会社に帰るが、6時を過ぎるようだと、帰社せず帰宅(直帰)する」といった感じでしょうか。
それでは次に第2ミッション。「今挙げた予定に『夕食のお惣菜を買う』という予定を加えてください」。するとどうなりますか?まずは「おそらく、買い物は出勤の時はムリ。仕事中も無理。帰り道で買うのが合理的」と考えるのが妥当なところでしょう。では買い物はどこで?「いつもの駅前のスーパーにするか?それとも、最後に訪れることにしている得意先の近くにいいデパ地下があるから、そこで買うのもいいな。でも、そこから買い物袋を抱えて、満員電車に乗って帰るのも大変だ」などと、いろいろ思い(計画)を巡らすのではないでしょうか。…と、ここまで来て、あなたは、「これいったい何のための“実体験”なの?」って思うでしょうね。
■“明日が見える”のは人間だけ
「あなたの明日一日の予定はどうなっていますか?」 は、「イヌやネコには明日は見えない。ヒトだけに明日が見える」ということを改めて実感していただくための実験です。「明日は思いっきり朝寝。午後は犬小屋の掃除」などと予定するイヌはいないのです。ヒト以外の動物には、「明日が見えないどころか一寸先は闇」 なのです。過去も現在もありますが、未来はないのです。
ちなみに、過去の記憶もすこぶる怪しいもので、金魚の記憶は3秒前くらいが限度だと聞いたことがあります(手を叩くと寄ってくるのは条件反射だと思います)。うちのイヌは、獣医さんのところに行くと緊張してぶるぶる震えていましたし、いろんな芸をしていましたから、ま、イヌやネコには、それなりの記憶はあると思います。でも、明日は見えない。ましてや未来は見えないのです。
人間の脳の非常に特徴的な働きの一つに「時間を前に(未来に)進めることができる」 ということがあります。
「ヒトは未来を“夢見る”唯一の生命体」 なのです。
言い換えれば「ヒト以外の動物には“夢”を見ることができない」です。そして、それだけではありません。
■人間の脳は“夢実現”のためのストーリーを作る
「晩ごはんのお惣菜を買う」で体験していただいたとおり、「人間の脳は、“夢見た未来”に様々な事態を想定してそれにベストに対応する“ストーリー”を作ることができる」 のです。人間の脳は、スーパーコンピューターのように、未来シミュレーションができるし、その設定条件を変えることにより、様々なストーリーが作れるのです。この「ストーリーを作る」 というのは、人間の脳の大きな特質です。イヌやネコにはできません。人間の脳だけが、“夢(快楽)”実現のためのベストなストーリーを作り、そしてそのストーリーを、あの“マネッシーくん”(神経細胞“ミラーニューロン”)がマネして、夢を実現するのです。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」