「気管支炎・肺炎がなかなか治らない」「中耳炎・副鼻腔炎を繰り返す」「体調を崩しやすく仕事を休んでしまいがち……」ということはありませんか? そんなときは、「一時的に免疫力が落ちているからかも?」と考えがち。でも実は、その陰に生まれつき免疫力が弱い希少疾患のPID(原発性免疫不全症)が潜んでいるかもしれないのです。
東京医科歯科大学大学院小児地域成育医療学講座の金兼弘和教授は、「PIDは、免疫のどこかに生まれつき障害があるために発症します。ご家族が同じ症状の場合にはPIDの可能性が高くなりますが、ご家族に同じ病気の方がいないことも多くみられます。中には、一時的な免疫系の未熟性により発症すると思われる病気もあります。障害される免疫細胞の種類や部位によって400以上の病気に分類されますが、それぞれが非常に希少な疾患です。健常な状態であれば、感染しにくい病原体にもかかりやすくなってしまいます」と話します。
■PIDをセルフチェックしてみよう!
金兼教授が監修したPIDの可能性をチェックする「PIDチェックシート」が、武田薬品工業運営のPID情報サイト『くりかえす気管支炎、肺炎、中耳炎ナビ』で公開されていますので、セルフチェックしてみましょう。
□1年に2回以上、中耳炎にかかる
□1年に2回以上、重症副鼻腔炎を繰り返す
□2年以上、1年に1回以上、肺炎にかかる
□非結核性抗酸菌感染症にかかる
□経静脈投与を要する感染症の反復
□体重減少を伴う慢性下痢症が見られる
□持続性の鵞口瘡(がこうそう)や皮膚真菌症がみられる
□2回以上、髄膜炎、骨髄炎、蜂窩織炎、敗血症や皮下膿瘍、臓器内膿瘍などの深部感染症にかかる
□反復性または重症ウイルス感染症(ヘルペス、EBウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症、広範囲のいぼ、コンジローマなど)をくりかえす
□原発性免疫不全症候群を疑う家族歴がある
金兼教授は、この10の徴候のうち2つ以上当てはまるものがある場合は、医療機関の受診を勧めています。もしPIDと診断されれば、「適切な治療が受けられるのでメリットが大きいと考えられる」と話します。
■PID患者の女性の体験談
PID患者の一人、関東在住の50代女性は、50歳でPIDと診断されました。幼少時から中耳炎、気管支炎、扁桃炎、胃腸炎を繰り返すも診断がつかず、学校に行けない日もよくあったそうです。20代以降は関節系の病気も併発するようになり、30代で出産しましたが、その後さらに感染症にかかる頻度が増えて症状も長引くようになり、仕事を休まざるを得ない日も増えていきました。
そうした中、49歳の春になって咳、呼吸苦、高熱に苦しみ、医療機関を受診してもなかなか改善せず、約1か月間横になって眠ることができませんでした。さらには手足のしびれが始まり、字が書けなくなり、都内の大学病院の神経内科に入院してさまざまな検査を受けましたが、それでも診断がつきませんでした。
その後、別の大学病院の血液内科で自分の病気がPIDと分かるまで約1年かかったそうです。ようやくPIDと診断されて治療が始まったことにより、突発的な胃腸炎以外はこれまでのようなひどい感染症を繰り返さなくなりました。50年間苦しみましたが、PIDと診断され、治療が始まったことで「第二の人生が始まった」と実感したそうです。
今回をきっかけに、「もしかしたらPIDかも?」と感じたなら、医療機関にかかることで新しい道が拓けるかもしれません。ぜひ、参考にしてくださいね。