2023年度上期、10年ぶりに放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」。見ていなかった人にも「じぇじぇじぇ!」と言わせたほどの人気作品だっただけに、これを機に最初から見ようと決めていた人もいただろう。しかし、10年ひと昔。いささか、放送の仕方が違ったようで‥‥。(2023年4月17日配信)
なぜいきなり大吉さんが叫んでいるの? そう驚いた視聴者も多かったようだ。
現在再放送されている、2013年度前期のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」。4月17日の放送では冒頭、ヒロインの天野アキ(能年玲奈)が母親の春子(小泉今日子)に腕を引っ張られ、発車間際の電車から飛び降りる場面があった。
車内には春子に想いを寄せている北三陸駅駅長の大吉(杉本哲太)が一人取り残され、「なして、なして俺だけ~」と絶叫。なんともコミカルな場面だったが、この展開に混乱する視聴者も少なくなかったというのだ。
「前週金曜日の放送でアキは、勉さん(塩見三省)の坑道で琥珀探しに挑戦。どんなに大声を出しても外には聞こえないとのことで、『東京さ帰りたぐねえ~!』と思いつめた表情で叫び、スッキリしたというシーンで終わっていました。ところが週が明けてみたらいきなり電車から飛び降りていたのです。その種明かしがあると思ったら、何の説明もなくこの回も終わってしまったので、キツネにつままれた思いを抱いた視聴者もいたようですね」(テレビ誌ライター)
この混乱を産んだのは「あまちゃん」が10年も前の作品であることが理由だろう。長い歴史を誇る朝ドラでは2020年代に入ってからも「カムカムエヴリバディ」が評判を呼んだほか、「ちむどんどん」や「舞いあがれ!」では内容のトンデモぶりが逆に話題を呼ぶなど、新たな視聴者を吸引し続けている。
それもあってここ数年で朝ドラを観るようになった視聴者には、「あまちゃん」のころとは朝ドラのスタイルが変わったことを知らない人も少なくないというのだ。
「かつての朝ドラは月曜日~土曜日の週6回放送でした。それが働き方改革などを理由に、2020年度前期の『エール』からは月曜日~金曜日の週5回に短縮。土曜日は一週間の振り返りに充てられています。その感覚で『あまちゃん』も月~金だと思い込んだ視聴者は、土曜日の放送を観ることなく月曜日に臨んだため、ストーリーがつながらなくなってしまったのです」(前出・テレビ誌ライター)
しかしそれが理由であれば、第2週の月曜日にも同じような勘違いが発生していたはず。ところが4月10日の放送ではそういった混乱がほとんどなかったという。それはなぜなのか?
「4月7日放送の第5回は、アキが海に飛び込むシーンで終わっていました。そして週明けの4月10日に放送された第7回では、冒頭で前週の振り返りが流れ、そこでもアキが海に飛び込んだ場面をプレイバック。次の場面ではアキが海女さんになっており、話が自然とつながっているように見えたのです」(前出・テレビ誌ライター)
第7回の冒頭では「こうして24年ぶりに16歳の新人海女が誕生しました」と、第6回の放送内容をごく簡潔にまとめていた。それはアキが海女になった経緯を足早に紹介したと受け止めることができ、視聴者としても腑に落ちていたのである。
しかし4月17日放送の第13回ではさすがに、前週土曜日の第12回を観ていないと話がつながらなかったのは明らか。ここにきてようやく「あまちゃん」には土曜日の放送もあることに気づいた人が多かったようだ。きっと今ごろは、HDDレコーダーの録画設定を慌てて「月~金」から「月~土」に変更している視聴者も少なくないに違いないことだろう。