今回は、「アナウンサーの “マネ顔”テクニック」。 アナウンサーは、あるテクニックを使って「相手の顔を思い通りに変えてしまう」のです。(写真は女性の動作や表情をマネする男性)
■「笑えば、笑う」 というアナウンサーの格言があります
これ、詳しく言うと「アナウンサーが画面で微笑みかけると、それを見ている人は必ず笑顔になる」という法則です。“自分が笑顔”になる、これが「“相手を笑顔”にする方法」だということなのですが、実はこの格言、脳科学でもきっちりとした裏付けがされています。それが“マネッシーくん”の存在です。
■“マネッシーくん”登場
人間は「人まね」をするようにできています。そのための細胞があります。“ミラー(鏡)ニューロン(神経細胞)”です。簡単に言えば、鏡のように何でもマネする神経細胞なのですが、私は「マネし細胞“マネッシーくん”」と呼ぶことにしています。マネッシーくんは「言葉を認識するプロセスの研究」の過程で発見されました。「ヒトは、相手の言葉をアタマの中で、マネしてしゃべってみる」ことで、「相手の言葉を理解している」ということがわかったのです。子供が言葉を学習する時もこのシステムが使われます。ヒトは、マネをして言葉を学ぶのです。「マナぶ」は「マネぶ」ことなのです。
■マネッシーくんを使って、“相手の顔や表情”をコントロールする
マネッシーくんは、“言葉”ばかりではありません。“顔(表情)や動作”も、マネ(ミラーリング)します。いったい何のために…。実はマネッシーくんは、「“顔(表情)”や“動作”をマネして、相手の気持ちを理解する」ために働いているのです。今回紹介した上の写真は、右の男性が、左の女性の表情や動作をマネして、女性の気持ちを理解しようとしています。男性はこんな流れで考えます。
「この人は、なぜこんな表情や格好をしているんだろう」「マネしてみよう」「おれって、まぶしい時とか暑い時とかにこんな顔や格好するよな」「あっ、そうか。彼女はまぶしいんだ。それに、少し暑いのかな。もう初夏だもんな」…てな具合です。
■“サルマネ”という言葉があるように
類人猿、アカゲザルくらいまでには、少数のマネッシーくんがありますが、あまり機能していません。 猫はマネッシーくんを持っていませんから、微笑みかけてもその意味を理解できません。それより、「ニャーオーン」と「猫なで声」で優しく話しかけてやったほうが、仲よくなれると思います。
■“相手の顔や体”の表情を
「マネッシーくんでマネして、相手の気持ちを読み取る」ということを、人間はこれまでずっと当たり前のようにしてきました。逆に言えば、私たちは、相手のマネッシーくんに働きかけることで、相手の“心”や“話の内容”も変化させられるのです。たとえば、「相手に同情する」「もらい泣きする」「相手の話に引き込まれる」という現象もマネッシーくんによって作り出せるのです。マネッシーくんは、思いやり、同情、慈しみなどの「人間らしさ」を保つための必須アイテムです。
■あなたのお友達にも「顔マネ名人」はいませんか?
その人は「思いやり名人」。きっとみんなの人気者ですよね。アナウンサーは相手のマネッシーくんをうまく活用して、スムーズな会話を引き出しています。「ギクシャクしている人間関係」を「相互理解」で、よくするカギを握っている偉大な細胞がマネッシーくんです。マネッシーくんは人間関係の救世主。あなたの中のマネッシーくんをもっともっと働かせてあげてください。
次回は、「“顔”が、劇的に、あなたを変える」です。理想的なあなたが誕生します。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演テーマ 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」