期待していたのに残念に感じるドラマを見るとエネルギーを奪われるような感覚がある。平日、毎朝放送されるNHK朝ドラ「おむすび」と土曜の夜に放送される「アンサンブル」(日本テレビ系)は、少し前から「TVer」で早送りにして視聴するようになってしまった。そうしないと自分が生活できる自信がなくなるほど、エネルギーを奪われたような気になってしまうからだ。
2つのドラマがもっともよく似ているのは、主人公アゲの激しさだ。周囲のみんなが主人公を大好きなのは構わない。その代わり、視聴者にも主人公アゲしたくなる主人公の素晴らしさを教えてほしいと強く思う。特に「アンサンブル」の主人公・瀬奈(川口春奈)は、どう見ても仕事ができるカッコイイ弁護士には見えない。さらに、瀬奈と真戸原(松村北斗)の恋愛を陰でこっそり見ながらキャッキャしている登場人物たちを見ていると、「お前ら全員中学生か?」と怒鳴りたくなってしまう。こんな気分になったのは、江口のりこ主演のドラマ「SUPER RICH」(フジテレビ系、2021年)以来だ。
気のせいかもしれないが、瀬奈を演じている川口も脚本に疑問を感じているのか、パリッと乾いた明るさが、いつもより足りないように思えてならない。瀬奈のやることなすことが自己チューに見えてしまい、どうして真戸原が瀬奈に好意を抱いたのか全くわからないことも、私からエネルギーを奪っている原因の1つかもしれない。懸命にドラマを視聴しながら「真戸原が瀬奈に好意を抱いた理由」を見つけようとして、疲れ果ててしまうのだ。
この点に関しては「おむすび」の橋本環奈演じる結と佐野勇斗演じる翔也が惹かれ合う理由は明確だったので、疲れることなく微笑みながら視聴できた。その分、「おむすび」のほうが「アンサンブル」よりマシかもしれない。キツイ言葉を並べてしまったが、「アンサンブル」には後半戦でなんとか持ち直してほしいと願っている。
(森山いま)