3月11日午前10時ごろ、東京都新宿区高田馬場の閑静な住宅街で起きたライバー女性刺殺事件が大きな波紋を呼んでいる。ライブ配信アプリ「ふわっち」で活動していた22歳の「最上あい」さんこと佐藤愛里さんは、2021年ごろから動画配信を開始。当時18歳だった佐藤さんは第1子を出産。未婚だったようだ。
佐藤さんを刃物で刺して現行犯逮捕された42歳の高野健一容疑者は、同年冬に佐藤さんの動画配信を知り、22年8月末には高野容疑者が佐藤さんの勤務する飲食店を来訪。2人は顔見知りとなった。同年9月から佐藤さんにお金を貸すようになった高野容疑者は、犯行動機を「借金までして250万円もの貸し付けをしたのにいっこうに返してくれなかったから、犯行を決意した」と供述している。高野容疑者は佐藤さんから「返す」と言われてはいたものの返済はほぼなく、23年の年頭に3万円の返済があり、その後は連絡が取れなくなったという。
高野容疑者は同年8月に「251万4800円」の返済を求めて民事裁判を起こしたが、裁判所に佐藤さんは現れず、高野容疑者が勝訴。しかしその後も佐藤さんからの返済はなし。また、事件直前には佐藤さんが一部の配信視聴者をブロックしていたのだが、その中に高野容疑者も入っていたとされる。
事件当日、佐藤さんは「3.11山手線徒歩1周」と題し、都内を歩きながらライブ配信していたところ、高野容疑者が佐藤さんの居場所を突き止め、凄惨な事件が起きることとなった。何があったとしても人を殺めることは罪だが、裁判所から返済命令が出ても返済していなかった佐藤さんの状況に疑問を抱き、弁護士をしている友人の父に電話で質問してみると「法律に詳しい友人の父」として応じてくれた。税金や国民健康保険料などを滞納すると口座差し押さえなどの命令を裁判所が下すそうだが、今回の場合は口座差し押さえにはできないのだとか。民事の支払い命令は、相手に支払う意思がないと泣き寝入りになる場合も少なくないそうだ。
集英社オンラインには佐藤さんと高野容疑者、佐藤さんとの金銭トラブル等の相談を聞いていた友人と高野容疑者との生々しいLINEのやり取りが掲載されているが、金を貸すなら返ってこなくても平気な額までしか貸してはいけない。借りるほうは相手に心があることを決して忘れてはいけないし、借金することの恐ろしさを知らなければいけない。
ライブ配信者に高額な支援を行うことで、視聴者は配信者との距離を縮められたように感じるかもしれないが、それは現実的ではない。繰り返しになるが、何があっても人を殺めてはいけない。当たり前のことがわからなくなってしまわないように、今一度、気持ちを引き締めたい。
(森山いま)