前回、東京湾に架かるレインボーブリッジの遊歩道を“歩いて”渡り、お台場までやって来た。遊歩道入口を出ると、右側に台場公園がある。江戸末期に徳川幕府が江戸湾を守るために築造した砲台跡だ。
正しくは品川御台場の第三台場になる。約9000坪の広さで、桟橋がある北側の一角が欠けているが、ほぼ四角形と言っていい。外周は高さ5~7メートルの石垣積みの土手になっていて、昔は大砲が据えられた。現在は黒松が植えてある。
土手を歩き、一段低い内側の平地に降りると、警備兵などが寝泊まりした陣屋跡、砲弾や火薬を保管した火薬庫跡、かまど跡などが見られた。
台場公園から来た道を戻り、お台場ビーチへ。白砂の砂浜が続き、奥に球体展望室が印象的なフジテレビ本社ビルが見える。今回は寄り道しないが、入場料を支払えば地上約100メートルの展望室から、臨海副都心の大パノラマが一望できる。
水上バス乗り場を経てスカイウォークに入り、しばらく歩くと“自由の女神”が待っていた。なぜ、ここに?と思われるだろうが実は1998年に「日本におけるフランス年」を記念して、フランス・パリ市に立つ自由の女神がお台場に移されたことがある。
翌年、その像は里帰りしたが、あまりの人気ぶりからパリ市に正式許可をもらい、2000年に完全復刻像を設置したのだ。レインボーブリッジを背にした自由の女神は今も人気スポットだが、意外にも日本人より外国人旅行者の方が多い。洋の東西を問わず、何か引かれるものがあるようだ。
レインボーブリッジに戻り、北側のノースルートで芝浦側を目指す。お台場アンカレイジまでの緩やかな坂道を上がると、正面に吊橋部の全景が見える。往路に渡ったサウスルートでは見られない風景だ。
高層ビル群や豊洲市場、東京スカイツリー、東京タワーなどの名所を眺めつつ歩いていると、向こう側からランナーが息を切らしながら走ってきた。
遊歩道は片道約1.7キロ。その間に信号機などないので、ランナーには走りやすいのかもしれない。トラックの走行音と振動は気になるところだけど…。
無事、ゴールの芝浦アンカレイジに到着。日没後のライトアップも興味深かったが、少し体が冷えたようだ。風邪をひいては一大事なので、熱燗を飲んで体を温めないと。芝浦ふ頭駅からゆりかもめに乗り、新橋の飲み屋街へ繰り出した。
内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。