駅で電車の列に横入りする人や、ごみのポイ捨て、歩きスマホでぶつかってきても謝りもせずに通り過ぎる…といったマナーの悪い人に遭遇する機会は多い。見るとついムカっときてひと言いいたくなるが、これは自分にとって百害あって一利なしだそうだ。
“怒りの感情が積み重なると無気力を生み出す”と警鐘を鳴らすのは、YouTubeチャンネル「精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル」を運営する精神科医・樺沢紫苑(かばさわしおん)氏だ。樺沢氏は5月25日付の動画でこう説く。
「ムカっとする気持ちはわかるんですけど、他人の行動は変えられないので、あれこれ考えるのが無駄なんですよ。マナーの悪い人なんて1日に何回も出会いますよね。それを見るたびにいちいちムカついていて、人生楽しいでしょうか。ムカッとするとノルアドレナリンやアドレナリンのような怒りの脳内物質が出る。怒りの脳内物質は記憶を強化するんですね。だから『何だコイツ、スマホ見ながら歩きやがって!』と思えば思うほど、あなたのネガティブ記憶が強化されて、自己肯定感が下がっていく。チャレンジを促されてもできない、何も行動できない性格傾向や行動パターンが形成されてしまうんです」
そういう時はスルーを決め込むのが一番というのだが、そこで樺沢氏が提唱する対処法が“言葉化”だ。「そういう人もいるよねー」「残念な人だなー」と心の中でつぶやいてみる。そして“人のふり見て我がふり直せ”で、自分がちゃんとできているのかを顧みることによって、ポジティブな体験に置き換えることができるというのだ。
最近では、マナー違反を注意された人が逆ギレして暴力行為に出たり、逆恨みされるといった事例も耳にする。赤の他人の行為に腹を立てて「バカヤロー」と怒鳴るのではなく、「しょうがないな」とスルーするのは身のためでもあるだろう。できれば大谷翔平のように、他人の落としたゴミをさりげなく拾える境地に至りたいものだ。
(所ひで/YouTubeライター)