ほのぼのしたホームドラマのようでいて、実は現代社会に斬り込んだ内容が詰め込まれている多部未華子主演ドラマ「対岸の家事～これが、私の生きる道！～」（TBS系）。“家事”という終わりなき仕事をテーマにした「新しいお仕事ドラマ」だと、TBSは公式ホームページで発表しているが、視聴者に気付きを与え、考えさせようとするパワーがみなぎっているように感じるのは、気のせいだろうか。
5月27日放送の第9話では、中谷（ディーン・フジオカ）との不倫をいくら否定しても信じてくれない夫の虎朗（一ノ瀬ワタル）に立腹した詩穂（多部）は、娘の苺（永井花奈）を連れて家を出て、坂上さん（田中美佐子）の家にひとまず身を寄せた。2人を捜しに坂上家を突き止めた虎朗から「中谷とはもう会うな」と言われた詩穂は納得できず、「主婦の有給（休暇）を取る」と坂上家に残ることに。困った虎朗は中谷に「昼間の詩穂のこと」をレクチャーしてほしいと懇願。虎朗は中谷から「家事の現実」を厳しく指導され、その大変さから「妻は不倫などしていられない」ことに気付き、詩穂に謝りにいくというシーンが描かれた。
その中で、虎朗に「家事とは具体的に何をどうするか」と、自宅で指導する中谷が何度も使った「ダメです」という言葉に、メロメロになった視聴者が少なくなかったようだ。
たとえば虎朗が食材を買ってきて冷蔵庫に入れると、「ダメです。葉物野菜は立てて保存してください」と中谷は論理的に厳しく指導。また、虎朗が中谷の娘・佳恋（五十嵐美桜）に作りたてのカレーを食べさせようとすると、「ダメです。ちゃんと冷ましてから食べさせてください」などと、いちいち「ダメです」と否定してから、その理由を説明することを何度も繰り返したのだ。
この繰り返しに「萌える」「私も中谷さんに虎朗のように家事を厳しく指導されたい」「おディーン様が何度も言った『ダメです』にキュンキュンしてしまった」「おディーン様に『ダメです』と論理的に説明されることを想像するだけでM心がウズウズする」「中谷さんの『ダメです』は魔法の言葉。もっと言ってほしくてポヤ～ンとしちゃう」といった、悦びの声だけでなくおねだりの声までが、ネット上にはあがっているようだ。
確かに、ある種のプレイのようにも聞こえた、ディーン演じる育休中のエリート官僚・中谷達也の「ダメです」。「叱られたい願望」がある人にとっては、最高の“きゅんワード”だったようだ。
（森山いま）
