昨年、日本テレビ系列で放送されたドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんの急逝を巡る問題で、日本テレビの対応への疑問の声が収まらない。芦原さんに対しては、2月8日、発刊元の小学館と「第一コミック局 編集者一同」が公式サイトに声明を発表。一方、同じ8日に、脚本を担当した脚本家の相沢友子氏も、インスタグラムで作品を巡る自身の過去の投稿を反省していると表明して芦原さんへの追悼を記した。小学館や相沢氏がコメントを発表したことを受け、ドラマを放送していた日テレは窮地に立たされているという。
「小学館の声明には、コメントを出すのが遅すぎるとXで批判もありますが、現場の編集者の本音を感じさせる部分もありました。相沢氏のコメントは、日テレと芦原さんのやり取りを知らなかったことを示しています。そういった状況を俯瞰してみると、やはり現状では、プロセスを明らかにせずに、哀悼と感謝の意を示すに留まったコメントのみの日テレが、相沢氏にも事実関係を伝えず、芦原さんのケアもできず、問題があったように見えてきます。著名な漫画家や脚本家からも、調査をしっかりすべきとの声も上がっていて、日テレは対応に追われているところのようです」(スポーツ紙記者)
自社への批判が続く日テレの一方で、ここに来て評価を上げているのがテレビ東京だという。総じて視聴率では日テレに及ばないテレ東だが、漫画原作のドラマを制作する能力は他局を圧倒しているとの声が再認識されているというのだ。
「テレ東は、昨年もよしながふみさんの漫画を原作にした『きのう何食べた? season2』を放送し、高い評価を得ました。また、シリーズ化して人気の『孤独のグルメ』は今や大晦日スペシャルが定番化するほどにテレ東を代表するドラマに成長。他にも、福原遥が主演を務めた『ゆるキャン△』は原作ファンからも好評で、『ワカコ酒』もシリーズ化されています。漫画のドラマ化については、しっかりと作り込んでシリーズ化し、視聴者を魅了している実績があるんです」(民放関係者)
予算も他の民放キー局より少ないテレ東が漫画原作ドラマのジャンルでは「勝ち組」となっているのは、少々意外な感もあるが、では、なぜテレ東は、質の高い漫画原作ドラマを作り続けられるのか。他局の編成担当者はこう解説する。
「ドラマ制作にかけられる予算が少ないぶん、作品をしっかり吟味し、途中で再調整するなどの失敗が許されず、必然、トラブルも少ないんです。また、テレ東のドラマプロデューサーは漫画好きが多く、本当に自分が作りたいと思う作品を探してドラマ化を出版社や漫画家に提案するので、始めからリスペクトの気持ちをしっかり持っていることは間違いない。他局には、脚本はオリジナルでないとダメだという原作漫画をどこか下に見ているタイプのドラマプロデューサーが結構いるんです。その点、テレ東はスタッフも低姿勢だし、真摯に作家と向き合う場合が多い。そういった姿勢が、漫画原作ドラマのヒット作を生み出せるポイントかもしれません」
実際、今回の一件で漫画家からもテレ東の評価はしっかりと上がっているという。
「原作者である漫画家には、テレビ局がどこであれ、それほど多額の使用料は支払われないんです。そうなると、せっかく映像化するならしっかりドラマを作ってくれるテレ東のほうがいいという声が出始めているようです。特に、漫画家は芦原さんの悲劇を見て、これまで以上にドラマ化の許諾に慎重になると言われています。今年に関しては、すでにほとんどの局はドラマのラインナップを決定し、漫画原作ドラマについては、漫画家も契約済みですが、来年以降はテレ東が漫画のドラマ化で優位に立てる状況になりそうです」(前出・民放関係者)
今後は、一層、「漫画原作ドラマと言えばテレ東」と言われる時代が来るのかもしれない。
(渡邊伸明)