Z世代を中心とした若い世代にとって身近なSNSは今やLINEでもXでもなくTiK Tok一択だが、幅広い年齢層がリーチするという意味では、YouTubeがやはり強い。そのYouTubeで、これまで日本におけるチャンネル登録者数が最も多い女性芸能人は、歌手のAdoだった。
「Adoはニコニコ動画出身でボカロPが作曲した楽曲を歌い、『歌ってみた』動画もたくさん発表するなど、ネットとの親和性が高いアーティスト。2022年に大ヒットした劇場版アニメ『ONE PIECE FILM RED』の歌唱キャストを務めたことで、YouTubeの登録者数が激増しました。2月から4月にかけての初のワールドツアーも成功させ、日本だけでなく海外でも評価される存在になりました」(音楽ライター)
ところが今年に入り、そのAdoのYouTubeチャンネル登録者数が、とある女性タレントに抜かれる事態が発生する。これはネット界の大ニュースと言っていい。4月25日現在、Adoの654万人を大きく引き離し、登録者750万人を誇るその人は、斎藤アリーナという人物だった。現在、24歳。
その名に聞き覚えのない人も少なからずいるのではと思われるが、実は知る人ぞ知る存在だ、と芸能関係者が証言する。
「斎藤は東京出身のオーストラリア人とのハーフタレントで、もともと小学生の時から大手事務所に所属しモデル・タレント活動をしていました。当時は『天才てれびくんMAX』(NHK Eテレ)や、『おはスタ』(テレビ東京系)などに出演していた、いわゆる子役タレントですね。13年にNHK朝ドラ『あまちゃん』に劇中のアイドルグループメンバーとして出演。また同時期に、同じく『ムジカ・ピッコリ―ノ』(NHK Eテレ)にも、主人公のアリーナモンテヴェルディ役で出演しています」
人気の2番組に出たことで、業界内での注目度は高まっていたという。ちなみに、番組を見たことがなくとも、その声を聞いたことがある人は多い。実は「赤いきつね・緑のたぬき」で有名な即席麺ブランド「マルちゃん」のテレビCMで、流ちょうな英語で「smiles for all」とナレーションを入れているのが、当時9歳だった斎藤だからだ。しかし、
「高校入学のタイミングで、学業優先の意向からいったん芸能活動を休止します。約2年間の休業後はシンガーソングライター兼動画クリエイターとして復帰。以後歌手活動と並行して、TikTokやYouTubeに動画を投稿し始めたのです」
正直、こと日本における知名度でいえば、Adoと比ぶべくもないが、斎藤はここ1年で登録者数を飛躍的に増やしており、現在は動画クリエイターも名乗っている。何がそこまでウケたのか。そこには優れた戦略性が隠れていた。ネット事情に詳しいITライターが解説する。
「斎藤が投稿しているのは、YouTuberがよくやる、何らかの企画を立てた10分程度のオチのある動画ではなく、大半がショート動画です。これがTikTokに慣れた若い世代にも手軽で見やすく、なおかつ言葉の壁もないから海外の視聴者も見れる。斎藤の動画は主に海外でバズったライフハック系(※日常生活で役に立つアイデアを紹介する)ショート動画の模倣にひと工夫加えたものが多い。登録者が伸びているのも、英語字幕を付けるなど海外視聴者を多分に意識した作りだからだと思います」(前出・ITライター)
10代のころに活躍した芸能界からは少し距離を置くことになったものの、Adoのように日本から世界へ羽ばたく可能性を秘めた「新世代YouTuber」帰ってきた斎藤。今後の活躍から目が離せない。