ライフ
2026/03/16 07:45
「ぬい活」ブームで気になる「人形供養」の現場に密着、住職が語る「人形の魂抜き」
ライフ
2026/03/16 07:45
昨年の新語・流行語大賞にノミネートされた「ぬい活」。お気に入りのぬいぐるみを旅行に連れて行ったり、撮影した写真をSNSに投稿したりと、思い思いに楽しむという活動のことだが、ブームや、蜜月の時にはいつか終わりが訪れる…。ともに長い年月を過ごした人形やぬいぐるみとの「別れの儀式」に密着した。
子供が大きくなって飾る機会がなくなった雛人形や使い古したぬいぐるみ、遺品整理で出てきた日本人形など、人形の処分に困った経験はないだろうか。もちろん、何のためらいもなくゴミとして処分する人も少なくないだろう。だが、愛着があればあるほど、捨てることに抵抗や罪悪感を覚えるものではないだろうか。
処分に困った時の駆け込み寺として知られるのが、東京都大田区にある「本寿院」(天台宗系)。同院は年中無休で人形供養を受け付け、毎月第2日曜日には朝9時(混雑時は8時30分)から合同供養を行っている。
記者が訪れたのは3月8日。寺と聞いて平屋の木造建築をイメージしていたが、3階建ての近代的なビルだった。朝8時30分、1階のロビーに行くと、すでに受付を済ませた10名ほどが待機していた。小さな子を連れた家族や老夫婦、1人でやってきた女性など、年令はバラバラだ。参列者たちに話を聞いた。
「今日は日本人形を持ってきました」(男性)
「母が大事にしていた雛人形を供養していただきました。金属製の小道具などもまとめて引き取ってもらえるということでしたので、事前に(宅配便で)お送りして、この法要にも立ち会わせていただきました」(女性)
「人形ではないのですが、叔母の遺影と生前に履いていたスニーカーなどの遺品を持ってきました」(女性)
しばらくして、合同供養が行われる3階の本堂へと案内される。奥の供養台には、雛人形や人気キャラクターのぬいぐるみ、フランス人形、日本人形などが丁寧に並べられていた(下の写真、記事は下に続きます)。

ほどなくして三浦尊明住職が姿を見せた。日本人の「供養の心」や人形供養の意義について法話を行うと、読経が始まった。その声が本堂に響く中、係の案内によって、参列者たちが順々に焼香していく。焼香を済ませたら、そのまま退席してもいいと説明を受けていたが、この日に参列した14人の中で、帰る人は1人もいなかった。
法要が終わってその理由が理解できた。人形との「最後の時間」を過ごすためだった。ある人は人形の方に向かって手を合わせ、ある人は涙ながらに「ありがとう」と人形に語りかけていた。
三浦住職に話を聞いた。
「法話でもお話させていただきましたが、外国の通信社の方が取材に来られて、大変驚かれていたんですよ。『どうして日本人は人形の供養をするのか?』『古くなったぬいぐるみなんて、うちの国ではゴミ箱にダンクシュートだよ』とおっしゃっていました。日本では昔から『目がついたものを捨てるなんてとんでもない』と考える人が大半だったのですが、近年では西洋的な思考が浸透してきたのか、簡単にゴミとして捨ててしまう方が増えていると聞いています。でも、子供の時からずっと大事に持っておられて、時には母親のように、時には友達のように接してきた人形には、“気”といいますか魂が宿るんです。ですから『このまま捨てたらかわいそう』と思うのは当然で、人形から魂を抜いてあげることが大切。この“魂抜き”の儀式を撥ケン(はっけん※遣の字はてへんに遣)と言います。『一木一草仏性有り』といって、すべてのものに魂が宿っているという考えは、日本人の根幹に息づくもの。人形とお別れする際、宿った魂をきちんと供養してあげたいと願う心は、日本人の美徳だと思うのです」
一生添い遂げる気持ちで「ぬい活」に勤しむ人も多いだろう。だが、急な転居などで、やむにやまれず処分しなければならない局面があるかもしれない。そんな時はひとつの選択肢として「人形供養」を頭の片隅に入れておいてほしい。
詳しくは「本寿院」の公式サイトにて
https://honjyuin.com/
(アサジョ編集部)
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