いまや国民的ドラマとなった「NHK連続テレビ小説」。民放のプライムタイムの連ドラでは10%を超えたら大健闘とされる中で、視聴率20%を少し超えるくらいでは“不振”扱いをされ、全話平均で23~24%程度の視聴率を叩き出すことは当たり前になっている。
となれば“トップ女優への登竜門”ともされるヒロインも錚々たる名前が並ぶ。平成30年間を振り返っても、松嶋菜々子(1996年「ひまわり」)、竹内結子(1999年「あすか」)、国仲涼子(2001年「ちゅらさん」)、石原さとみ(2003年「てるてる家族」)、榮倉奈々(2008年「瞳」)、多部未華子(2009年「つばさ」)……。2006年「純情きらり」の宮崎あおい以降、オーディションを行わずに最初からトップ女優を起用するケースも増えているが、それでも朝ドラが“登竜門”であることは変わらない。最近はヒロインだけでなくその友人などを演じた脇役の若手女優が注目を集めるケースも多いくらいだ。
ところが、“朝ドラヒロイン”ならば誰もが順調にトップに上り詰めることができるのかというとそういうわけでもない。その象徴的な存在になっているのが、今回の女優だ。
・2012年「純と愛」夏菜
夏菜自身の最近の破天荒なキャラクターが印象的だが、「純と愛」もなかなか衝撃的な朝ドラだった。「女王の教室」「家政婦のミタ」などを手がけた遊川和彦が脚本を手がけたのだが、これが朝ドラの中でもとびきりのダークなストーリー。夏菜演じるヒロインの狩野純が祖父の経営していたホテル再建を夢見るも半ば強制的に売却されて心が折れて、転職先のホテルも火事で焼失、故郷で再起を図ってホテル開業にこぎつけるも夫の愛(風間俊介)が脳腫瘍で倒れて昏睡状態…。とにかくヒロインの心が折れまくる朝ドラで、民放連ドラの1クールならまだしも半年に渡って鬱展開を見せつけられる視聴者はたまったものではなかった。
こうしたダークストーリーに加え、朝ドラ放送直前に夏菜の熱愛が報道されたこともあって当然のごとく視聴率は低迷した。前作「梅ちゃん先生」(堀北真希)、次作「あまちゃん」(能年玲奈)と大ヒット作に挟まれた不運もあったにせよ、平均視聴率17.1%は大惨敗。夏菜自身はその後明らかにバラエティに舵を切ってぶっちゃけキャラとしてブレイクしたが、この大コケ朝ドラ主演を逆手に取ったようなもの。普通ならば“栄光の過去”になるはずの朝ドラを黒歴史として自らアピールして仕事を勝ち取るという根性たるやなかなかのものだが、逆に言えばそうしたキャラとドラマの内容の不釣り合いさも駄作化の要因になったのだろうか。
(山三大志)