観客のほうにも「覚悟」が求められるのかもしれない。
9月15日に公開を予定する映画「ミステリと言う勿れ」の新キャストが発表。鈴木保奈美、松坂慶子、滝藤賢一、角野卓造、段田安則らの出演が明かされた。この発表に原作マンガのファンには一抹の不安を覚える人もいるという。
同作は昨年1月期にフジテレビの月9ドラマとして放送され、一大ブームに。田村由美氏による原作マンガはいまや1800万部超えという大人気作品となっている。
映画化されるのは原作の第2～4巻で描かれた「狩集家遺産相続問題」で、通称“広島編”だ。映画の内容はまだ明かされていないものの、ドラマ版が概ね原作を忠実に再現していたことから、映画版のほうもほぼ原作通りになるものと見られている。
「原作とドラマ版の大きな違いは、原作では脇役の一人にすぎない新米女性刑事の風呂光聖子（伊藤沙莉）が、ドラマ版では主人公の久能整（菅田将暉）に恋心を抱く設定になっていること。今回の映画版に関しても、原作では風呂光が広島編に登場しないにも関わらず、映画版では出演者に名を連ねています」（女性誌ライター）
果たして風呂光はどれくらい、映画版のストーリーに絡んでくるのか。原作ファンが警戒心を抱く一方で、今回の新キャスト発表に関しても不安を感じる人がいるという。ただそれは制作側や演者の問題ではなく、観る側の問題だというのだ。
新キャスト発表では、物語の中心となる狩集家の顧問税理士・真壁軍司役として角野、顧問弁護士の車坂義家役として段田の名前が明かされている。その角野と段田に、本作品ならではの不安を覚えるという原作ファンも少なくないのである。
「ネタバレになるので詳しいことは書けないのですが、顧問税理士の真壁と顧問弁護士の車坂は本作において非常に重要な役割を担っています。原作では広島編の最終盤になって、やっとその役割が明かされる形です。つまり原作ファンは、角野が演じる顧問税理士と、段田が演じる顧問弁護士が『何かを隠している』ことを知りながら映画を観ることになる。その疑念をしっかりとかわし続けられるのか。二人の演技には大きな関心が寄せられることになり、観客の側も気が気でならないことでしょう」（前出・女性誌ライター）
ただ同じ現象はドラマ版の時にもすでに表面化していた。謎の女性・ライカ（門脇麦）や、下戸陸太（岡山天音）といった主要人物の正体は、原作を知っている人にとっては最初から明らかだったからだ。
それでもドラマ版でほとんどの視聴者は、ネタバレ感を抱くことなく物語に没入できたはず。むしろ「こうやって描くのか」「原作に忠実でスゴい！」といった感慨を抱きながらドラマを楽しむことができたのではないか。
「その前例にならえば、ドラマ版で門脇や岡山の演技に原作ファンが感心していたように、映画版でも角野や段田の演技に魅了されることが期待できそうです。見方を変えればネタバレでも観る者を感動させられるほど、演者は素晴らしい演技を見せてくれていると言えるのかもしれません」（前出・女性誌ライター）
その流れで考えれば風呂光刑事を演じる伊藤に関しても、原作には存在しない創作要素を気にするより、彼女の演技そのものを楽しむのが吉なのかもしれない。
