これは選挙ポスターではないよな、と東京都知事選に立候補した人々のポスターが並ぶ掲示板を通り過ぎようとしてギョッとなった。「世界は三浦春馬であふれてる」と黒い縁取りのある白い文字で書かれた横には、青いストライプのシャツを着た三浦さんと思しき笑顔の男性のイラストが描かれていたからだ。
「あふれている」ではなく「あふれてる」と口語体のキャッチフレーズも引っかかったし、ポスターの下4分の1は赤字に白い縁どりのある赤い文字で「選挙を楽しもう」とあり、大きなQRコードが付いていたので「これは…」と思い、即座にスマホで調べてみると、三浦さんが所属していた芸能事務所「アミューズ」法務部が声明を発表していた。東京都知事選に24人を擁立した政治団体が、ポスター掲示場の枠を「寄付金」という建前で事実上の「販売」をし、問題になっていることは知っていたが、このポスターがその1種なのかとがく然とした。
なぜ2020年7月18日に亡くなった三浦さんの似顔絵にキャッチコピーを付けてポスターにしたのか。非常識で無神経。他人の気持ちを考えられないにもほどがあると思った。
アミューズの声明によれば、QRコードを読み込むと「最終的には動画共有サイトの有料メンバーシップの紹介等の商業目的に使われていると見受けられました。皆様におかれましては、今回の選挙ポスターによる収益活動に利用されませんようご注意ください」とあり、「強い憤りを覚えており、またご遺族も大変心を痛めております」と抗議している。都知事立候補者が過去最多の56人もいることも異常だが、何をしてでも金儲けをしようとする人の多さも異常ではないだろうか。
6月28日12時時点でまだ、三浦さんのポスターは撤去されていない。この手で剥がしてしまいたいけれど、勝手に剥がしたら罰せられるから剥がせない。早急な法整備をお願いしたい。（※ポスターを掲示した「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏は、同日に更新した自身のYouTubeチャンネルでこの件について謝罪し、問題のポスターをすべて撤去し張り替えたと報告している）
（森山いま）
