テレビプロデューサーでコメンテーターのデーブ・スペクター氏が12月9日放送の「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」（ニッポン放送）に出演し、SNS上で過熱する“オールドメディア批判”について本音を語った。
近年、テレビや新聞などの古参メディアを、ネットやSNS、YouTube、TikTokなどの新興メディアと比較し、「オールドメディア」と批判の意味を込めて呼称する風潮がある。
とりわけ、アメリカ大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の大勝や、兵庫県知事・斎藤元彦氏のパワハラ疑惑をめぐる報道では、テレビが伝えた内容と、SNSで拡散された情報に大きな差があり、世間が“オールドメディア”への不信感を強める要因になったとされている。
最近では、「オールドメディアvsSNS（新興メディア）」の対立構造で語られることも増えたが、この風潮に「頭にきた」「冗談じゃないですよ」と息巻いたのは、多くのテレビ番組でコメンテーターとして活躍するデーブ氏だ。
まず同氏が指摘したのは、TikTokやYouTubeが発信する情報コンテンツの「ショボさ」で、「皆、オールドメディアを舐めすぎ。確かに足らないことはありますよ。誤報もありますし、編集もクセがあるとかありますけど、チェックするために何百人もいるわけです」「テレビの良さっていうのは、支局だって特派員とかいるじゃないですか。現地にもスタッフがいるし、世界中にいるのに。なにがYouTubeだよって言いたくなっちゃう」と、事実確認のチェック体制で雲泥の差があると語る。
また、SNSでユーザーから信頼を集めている「インフルエンサー」については「勘違いしてる。組織として成り立ってないし、バックに何もない」と苦言。一方で、“オールドメディア”には「1個のテレビ局だったら60年分くらいのライブラリがある。いわゆる資料映像。全部あるんですよ」と情報量にも強みがあると主張した。
東京都知事選で165万票を集める大健闘を見せた石丸伸二氏や、兵庫県知事に返り咲いた斎藤氏は、SNSで巧みに人気を積み上げていったとされるが、これにもデーブ氏は「石丸さんとか斎藤さんは確かにSNSは大きかったんですけど、メディアが取り上げたことを繰り返してやってるだけで、つまみ食いをやってることが多い。独自で何も取材してない」とし、同氏自身も日々出演しているテレビについて「もちろん時代に合わせなきゃいけないし、それも分かってるんですけど、ちゃんと頑張ってるじゃないですか」と強調している。
「ただし、SNSのインフルエンサーが“大きな組織ではない”ことは、メリットとしても機能していることは事実です。大手メディアが関係組織に過度に配慮することで、忖度や馴れ合いが発生しやすいのに対し、インフルエンサーは迅速かつ大胆に情報を伝えられるため、大手が頬かぶりする事案だったり、間隙を突く役割が評価されています。最近で言えば、旧ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏による性加害問題が最たる例で、2004年には最高裁でジャニー氏の加害が確定したにもかかわらず、テレビはこの実態を一切報じずに“見て見ぬふりをしていた”と批判されても仕方がありません。デーブ氏自身も昨年9月に出演した『イット！』（フジテレビ系）で、テレビがジャニーズ問題をようやく取り上げたきっかけについて、『BBCの報道で動き出したというのは反省しなければならない』と指摘。およそ50年近くにわたって行われてきたとされるジャニー氏の性加害に関し、どこかでテレビメディアが真相を報じていれば、少しでも被害者を減らすことができたはずです。蜜月関係にあった旧ジャニーズの実態を暴くことが困難だったのは、まさに“組織が大きすぎたこと”がデメリットとして作用したケースであり、そうしたしがらみのないインフルエンサーに一定の支持が集まるのは自然なことでしょう」（テレビ誌ライター）
また、旧ジャニーズが会見で性加害の事実を認めて謝罪するやいなや、手のひら返しのように批判を強め、同社所属タレントの起用を控える動きを見せたことも、世間からすると「全く報じなかったあなたたちも同罪では？」と不信感が募った原因と言えるだろう。
（木村慎吾）
