このパターンにはもう飽き飽きしたんだけど…。そんな声が随所からあがっているようだ。
4月12日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第8回では主人公の槙野万太郎(小林優仁)が、名教館・学頭の池田蘭光(寺脇康文)から「本草綱目」という貴重な書物を貸し与えられる様子が描かれた。
草花に対して異常なほどの興味を示す万太郎。博学強記の蘭光はそんな姿勢を面白く思ったようで、書物を読めるようになりたいと願う万太郎に個人授業を施すほどの入れ込みようだ。そんな姿に、前2作品の朝ドラを観ているようだとの声があがっているという。
「万太郎は自分の興味が向くことには異様に集中できるタイプ。造り酒屋の跡継ぎとして何不自由のない生活を送るなか、自分の好きなことだけに熱中する姿には身勝手さが感じられます。それでいて草花に対する興味を蘭光が面白がったり、番頭から借りた懐中時計を勝手に分解しても祖母から怒られないなど、周囲には協力者ばかり。その姿は『舞いあがれ!』の岩倉舞や『ちむどんどん』の比嘉暢子といったヒロインを、少年に置き換えただけのように見えてしまいますね」(テレビ誌ライター)
前作「舞いあがれ!」ヒロインの舞(福原遥)は、部品工場の娘として不自由のない生活を享受し、大学進学はもちろん、せっかく入った大学を中退して航空学校に入りなおした際にも、授業料や寮費の心配をする場面は皆無だった。
さらには航空会社の内定を蹴って実家の部品工場を手伝ったり、独立して自分の会社を立ち上げた際にも周りは応援してばかり。ヒロインの思いは常に尊重されるという「ヒロイン全能説」をこれでもかとばかり証明し続けていたものだ。
それは前々作の「ちむどんどん」でも同様だった。ヒロインの暢子(黒島結菜)は沖縄の実家こそ借金を抱えて貧乏だったものの、高校卒業後には内定を蹴って上京。何の伝手もないはずが、偶然出会った沖縄県人会の会長は亡き父の知り合いであり、職場やアパートを手配してもらうなど協力者に恵まれていた。
しかも未経験者にも関わらず、いきなり銀座のイタリア料理店で採用されることに。そのオーナーは実際のところ自らの大叔母であり、これといった苦労とは無縁なままで銀座での料理人生活を享受していたのである。
「朝ドラの視聴者は、2作品続けてヒロインが身勝手なうえに周囲からの協力に恵まれすぎていることに呆れ果てていたもの。それが『らんまん』では主人公が男性となり、実在の人物をモデルにしていることからやっと物語に没入できると期待していたのです。ところがふたを開けてみたら、前2作に勝るとも劣らない身勝手さに加え、裕福な生家と理解のある学頭といった環境にも恵まれていることが判明。主人公の万太郎に感情移入しづらいことから、早くも離脱する視聴者が後を絶ちません」(前出・テレビ誌ライター)
前日の第7回では、武士の子供たちによるイジメに遭っていた万太郎。しかし木刀での一撃はお付きの者である竹雄(南出凌嘉)が受け止め、しかも第8回になったらもはやイジメはどこかに消え去っていたのである。
当初は町民の子供として畳敷きの上座に上がることは許されず、板張りの下座で学ぶことを余儀なくされていた。それも第8回ではいつの間にか、武士の子供たちに混ざって前のほうで座学を受ける姿が描かれていた。これもまた明治維新ならではの史実かもしれないが、とにかく万太郎は苦労や苦学とは無縁のようだ。
「苦労を知らないだけならともかく『らんまん』を含めたここ3作品では、主人公があまりにも恵まれすぎています。その姿は再放送中の『あまちゃん』にて、ヒロインの天野アキが学校に馴染めない辛さや海女修行の苦しさを克服していく様子とは対照的。これでは視聴者が10年前の作品である『あまちゃん』のほうに心惹かれてしまうのも当然でしょう」(前出・テレビ誌ライター)
まだ第8回が終わったばかりの「らんまん」だが、ここまでで話題になったのは坂本龍馬を演じたディーン・フジオカや、第1週で亡くなった母親を演じた広末涼子など、主人公とは別の登場人物ばかり。果たして万太郎は視聴者の支持を得ることができるのか。今後の展開に不安が募るのも致し方なさそうだ。