昭和らしさはこういう形で失われたのか。そう実感した視聴者も少なくなかったようだ。
4月21日深夜に第2回が放送された「オールナイトフジコ」(フジテレビ系)では、昭和のバラエティを彷彿させるコーナーを展開。かつての「オールナイトフジ」(1983年~1991年)を知る視聴者が大喜びしていた。
グラドル10人が集合した「アピれるどうぶつの森」コーナーでは、グラドルたちがどうぶつの被り物で顔を隠し、イス取りゲームなどに挑戦。勝ち抜いた一人だけが素顔を見せ、30秒間のアピールタイムをゲットできるという艶系企画だ。
水着姿で押し合いへし合いし、バストやヒップにカメラが迫る映像はまさに昭和クオリティ。コーナーMCを務めた峯岸みなみが、たんたんとした表情で進行を務める姿もまた、昭和の雰囲気を醸し出していた。
「このコーナーに対しては《バカバカしい》《呆れた》といった声もあり、ネガティブな反応ばかりを取り上げるメディアも。しかし『オールナイトフジコ』はそもそも、昭和のバカ騒ぎを令和の現代に再現する試みであり、その手の批判は失当でしょう。むしろコンプライアンス優先の時代によくぞここまで下世話なコンテンツを再現してくれたと、拍手を送りたい気分です」(昭和のテレビ業界を知るベテランライター)
そんな下世話さが支持を得るなか、一方では「オールナイトフジ」らしさを期待していた視聴者をガッカリさせる場面もあったという。それは、とにかくテレビに出たい人が飛び入り参加できる「生放送で何かしたい人 集合!」と題したコーナーだった。
同コーナーではフジテレビの社屋前に参加希望者が集まり、村重杏奈がコーナーMCを担当。10人に30秒のアピールタイムが与えられるはずだったが、そもそも放送時間を考えれば10人も素人をさばけるはずがなく、実際にアピールができたのは5人ほどに過ぎなかった。
そんなバタバタぶりに加え、現場では村重を守るスタッフがいないようで、彼女のすぐ背後で参加希望者がパネルを手にアピール。どう見ても面白くなさそうな連中ばかりが目立っており、現場での仕切りがまったくできていない様子を露呈していたのである。
「これが『オールナイトフジ』だったら、とんねるずの石橋貴明が『てめえ、引っ込んでろ!』と素人参加者に蹴りを入れたり、首根っこを捕まえて画面の枠外まで引きずっていったもの。石橋に限らず番組スタッフも実力行使で素人を仕切り、『面白い絵作り』に注力していました。しかしコンプライアンス重視の令和で、番組側が素人を蹴ったり引きずったりなど許されるはずもなく、番組スタッフ側も予想を超えて押し寄せた参加者に対応しきれなかった様子。それが結果的に、このコーナーをつまらないものにしていたのです」(前出・ベテランライター)
もちろん、コンプライアンスを無視して参加者を蹴飛ばせばよかったという話ではない。令和には令和の基準があるのだから、その基準内で面白いコーナーを作れるように、事前に参加者を仕切っていればよかったのである。
しかし参加者が多数集まっている絵作りはしたものの、どう仕切るかまでは考えが及んでいなかったのだろう。それは制作側の準備不足だけではなく、そもそも昭和の番組作りを覚えているスタッフがいないことも示していたのではないだろうか。
「なにしろ34歳以下の社会人が全員平成生まれという現在、番組スタッフのほとんどは『オールナイトフジ』など見たことない人ばかり。当時の空気感を再現しろと言われても、分かるはずがありません。過去の映像を見て真似しようにも、制作の裏側がどうなっていたのかなど知る由もないのですから、グラドルコーナーのようにスタジオ内で完結する企画はなんとかできても、素人参加者を集めた企画が破綻するのは必然だったわけです」(前出・ベテランライター)
とはいえ、令和の現在に昭和の熱気を再現しようという試みに期待する視聴者も少なくない。きっと「オールナイトフジ」が始まった当初も、同じように混乱があったはず。そんな混乱ぶりも含めて番組が成長していく姿を楽しんでいきたいところではないだろうか。