どうにも曖昧な展開に、首を傾げる視聴者もいたようだ。
12月21日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第59回では、ヒロイン・スズ子(趣里)の楽団を支えていたマネージャーの五木(村上新悟)が失踪。代わりに元村山興業の山下達夫(近藤芳正)なる人物が後任となる顛末が描かれた。
五木は村山興業の東京支社長・坂口(黒田有)から、スズ子と愛助(水上恒司)を別れさせるための手切れ金を預かっていた。だが五木は一部だけをスズ子に渡し、残りを持ち逃げ。長野に暮らす良い仲の女性とその息子と一緒に暮らす生活を選んだのだった。
「五木は置き手紙に『あの二人をどうにか幸せにしたいと、小生、実はそればかりを考えて生きてきました』と書き残していました。彼は愛する女性との出奔を選んだわけですが、動機としては唐突過ぎますし、モテ男の五木が特定の女性を選んだ理由も不明。いささか強引すぎる展開に、もやもやした視聴者も多かったのではないでしょうか」(芸能ライター)
これでマネージャーがいなくなったことから、恋人の愛助が旧知の山下を公認候補として紹介したわけだが、これらの筋書きは史実とはかなり異なっているという。
スズ子のモデルである笠置シヅ子の場合、資金繰りに窮した楽団のマネージャーが笠置に無断で楽団を興行会社を売却。それが原因で笠置は独り立ちすることになった。
その事情を作中ではすっ飛ばしているのだが、それはスズ子を悪者に描かないための制作側による工夫ではないかというのだ。
「笠置が楽団と袂を分かったのは楽団売却だけが原因ではありません。笠置自身がかなり気の強い性格で、楽団メンバーといざこざを起こしていたのも理由の一つだったのです。それに対して作中のスズ子は気遣いの細かな好人物として描かれており、楽団との人間関係も実に良好。そんな笠置とスズ子のギャップを埋めるために、悪者役を五木に押し付けたのかもしれません」(前出・芸能ライター)
もう一人、スズ子の負の部分を代わりに背負っているのが、内弟子的な存在の小夜(富田望生)だ。いつも憎まれ口を叩き、文句ばかりを口にしている小夜。視聴者も眉を顰めるほどに口の悪い小夜がいるからこそ、スズ子の人の好さが際立っている形だろう。
ドラマのオリジナルキャラである小夜と、史実とは異なる行動を見せたマネージャーの五木。スズ子というキャラを輝かせるために、この二人が縁の下の力持ち的な役割を果たしていたのではないだろうか。