何を言っても「ふーん」。何を聞いても「どうでもいい(どっちでもいい)」。何を提案しても「別にいいよ」。そんな我が子の薄いリアクションをみて、「心からこうしたいという思いはないのかい!」と思うこともあるのでは。これでは自分の意思で楽しんで人生をおくることはできないのでは?と、心配になってしまうお母さんもいるかもしれません。
子どもたちの学びの現場にいると、お母さんが心配になるほど、他人への興味・関心が薄く、コミュニケーションに乏しい子がいます。でもだからこそ、その子が持っている“光る力”がみえてくることがあるのです。
4年生のMくん。とても素直で、宿題を忘れて居残りをする日も、先生の言う通り進めて「ありがとうございました」と帰っていきます。そんなに素直にできるのなら、最初から自分でやれるはず。それなのに、自分から進んで行うことはほとんどありません。そんな様子が学校でも塾でもみられるため、お母さんは悩んでいるようでした。そこで、Mくんとのやり取りの中で、学校や自宅でのことも話題に出すようにし、少しずつ彼のことを探っていきました。
Mくんの話からは、意外な一面もみえてきました。とても難しい迷路を作って自由帳に描くのが好きだったり、人の話をじっと聞いていると「なぜそんなに話さないと分からないのかな? こういうことでしょ?」と、自分だけが話の要点や全体像がみえたりするのが面白く、観察をしたり話を聞いたりするのが好きなことが分かりました。こんなふうに、関心がないようで「実は好きなこと」は持っていて、何かにのめり込んでいたりもするものです。その一方で、お母さんとの性格の違いに悩んでいるようでもありました。
Mくんは落ち着きがあり、いつでも冷静でいられるところが長所の一つ。ですが、なかなかリアクションを返してこない我が子の意欲を高めようと、「すごいじゃない!」「Mならできるわよ!」などとオーバーリアクション気味に伝えてくるお母さんに、「何か裏がある(企んでいる)のでは……?」と疑いの目を持ってしまうようでした。
お母さんもよかれと思って、行動へ繋がるように背中を押そうとあれこれ試したのだと思います。Mくんも、「どっちがいい?」と聞いてくれることはとてもうれしく、どちらでも満足という気持ちを上手に表現できないのでした。リアクションが薄くても、実はお母さんが思っているよりもずっと気にかけてもらっていることがうれしいし、「絶対にこうしたい!」という自分の意思を通さなくても、十分な幸せをMくんは感じていたのです。
二人がもう少し寄り添い、Mくんは「お母さんが気遣ってくれるだけでうれしいんだ」などと言葉に出し、お母さんは「私とは少し捉え方が違いそうだけど、あなたの答えを大切に受け取るね」と理解を示せば、状況は全く違うのかもしれません。
性格が違えば、「○○のはず」が通用しないのは当たり前のこと。自分が思う幸せと相手が思う幸せは違うと考えを改めて、我が子にも接してあげましょう。
(Nao Kiyota)