いまや朝ドラ、NHK連続テレビ小説はテレビドラマ界のトップランナーになった。視聴率20%を少し超えるくらいでは“不振”扱いをされるほどで、全話平均で23~24%程度の視聴率を叩き出すことは当たり前。民放のプライムタイムの連ドラでは10%を超えたら大健闘とされる中で、朝ドラは圧倒的な結果を出し続けているのだ。
ところが、“朝ドラヒロイン”ならば誰もが順調にトップに上り詰めることができるのかというとそういうわけでもないようだ。また中には作品そのものが“コケて”しまい、主演女優のその後の活躍の中で事実上“黒歴史”として扱われてしまうようなケースも少なくない。今回で最終回。“恵まれなかった朝ドラヒロイン”最後の女優は…。
・2015年「まれ」(土屋太鳳)
土屋太鳳本人は飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍を続けているが、作品は別。朝ドラの大ヒットは当たり前という時代の中で、「まれ」は平均視聴率で20%を割った数少ない作品になってしまった。
放送前の期待値は比較的高く、初回視聴率は20%超えを果たしている。普通はその後ストーリーが展開するに連れて徐々に視聴率が上がり、22%前後で安定することが一般的。ところが「まれ」の場合は第3週以降は徐々に低下して18~20%前後で落ち着いてしまったのである。パティシエを目指して横浜に出たものの突如それをやめて輪島塗の塗師の女将になって最後はまた自分の洋菓子店をふるさとで開くという都合のいい展開、粘着質全開の恋愛シーンなどが嫌われたようだ。
さらにドラマ終了後もケチだらけ。ヒロインの友人役だった清水富美加が“出家”して千眼美子となったり、同じく友人役の高畑裕太が女性に対する法律違反行為で逮捕されたりと、トラブルが相次いだのだ。こうなってしまえば、作品が葬られてしまうことは避けられない。結果、土屋太鳳にとってはステップアップの大きなきっかけとなったはずの朝ドラがすっかり“黒歴史”になってしまった。真面目な人柄として知られる土屋だが、果たしてこの“黒歴史”ヒロインについてはどう思っているのだろうか…。
このように、大ヒット連発で出演者の注目度も飛躍的にアップする朝ドラも、すべてが恵まれているわけではない。駆け出しの若手女優を起用することの“リスク”を嫌ってか、このところはオーディションを行わないケースが大幅に増加した。前作の「まんぷく」安藤サクラ、現在放送中の「なつぞら」の広瀬すず、次作「スカーレット」の戸田恵梨香と、すでに確固たる地位を得ている女優の起用が続いている。さらに2020年放送予定の「エール」に至っては主人公が女性ではなく男性(窪田正孝主演)だ。
果たして新時代の朝ドラとそのヒロインたちは、どんな“ドラマ”を見せてくれるのだろうか。
(山三大志)