13歳のウクライナ人モデルにコメントを強要した疑いがあるとして、日本テレビ系報道番組「news zero」に大きな批判が寄せられている。
発端は、9月5日放送の東京ガールズコレクション(TGC)特集で、ランウェイを歩いた少女の「強い思い」を伝えた際の演出だった。
番組では、今年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、3月に母・ユリアさんと愛知県に避難してきた13歳のウクライナ人モデル・ブラダさんを紹介。名古屋市内のモデル事務所に自ら売り込み所属が決まると、TGCという大舞台でのランウェイデビューが叶ったが、「news zero」では過剰な「お涙頂戴」の演出があったという。
同日放送の「news zero」はランウェイデビューを遂げたブラダさんについて「そこにはある強い思いが‥‥」とし、3月の避難からすぐにモデル事務所に在籍した理由を紹介。ブラダさんは「“私はここにいて大丈夫、安全だよ”ってパパに見せたいです」と答え、戦地に残った父親を安心させるためだと語った。
しかし、9月28日配信の「デイリー新潮」によると、この回答は、zeroスタッフがブラダさんに渡したメモの指示に沿って発した言葉だったというのだ。
ブラダさんが受け取ったメモには「お父さんを安心させたい 自分たちぶじよ」と書かれており、ほかにも「本番前の緊張」「お母さんと2人で励まし合っている様子」とのメモがあったと同誌。そして、ブラダさんと母親はそのメモに従って、日本テレビ側が求めるイメージに合わせてコメントを残し、「いいモデルになりたい。周りに優しいモデルになりたい」といった発言は放送ではカットされていたとのこと。
さらに、母ユリアさんは、娘のランウェイデビューを本来であれば立見席から見届ける予定だった。しかし、そこはステージから30mほどの距離で、テレビ撮影が許可されないエリアだとわかると、「news zero」はユリアさんをステージから200~300m離れた場所、つまりは撮影可能なエリアに移動させたという。
また、TGC関係者も、番組側のブラダさんへの質問が「お父さんへのメッセージ、ウクライナへの気持ち、国の代表としての気持ち」といった内容ばかりだったと証言。挙げ句の果てには、ブラダさんの父と母が離れて生活をせざるを得ない状況であることを、通訳が「離婚」と誤訳。zeroが離婚についても執拗に聞き出そうとしたところ、ブラダさんは「泣いて逃げてしまった」という。
「故郷を離れ、避難先である日本で夢だったモデル活動を続ける少女にスポットを当てることは問題ありませんが、彼女のコメントや背景にある強い思いを番組側が脚色し、発言を強要したのであれば大問題でしょう。また、一連の疑惑について同誌から質問を受けた日テレは、当日の取材場所や時間などは、TGC広報の担当会社と事前に打ち合わせし、その指示に従ったと回答。しかし、TGC関係者は『全て日テレ側が事前に指示した』と明かしており、両者の見解は食い違っています」(テレビ誌ライター)
これにはネット上でも「本当にヤラセが染み付いてるな」「昔から変わらないテレビマンの本質」「これが本当なら放送免許停止ものだろ」「ニュース番組がストーリーを強要してはダメ」などの声が続出している。
そもそも、ブラダさんは幼少期よりモデルになる夢を持ち、ウクライナにいた頃から養成学校に通っていた。その経緯がありながら、ランウェイデビューを無理やり戦争と結び付けるような演出は、彼女にとって重荷になってしまうリスクもあると言えそうだ。
(木村慎吾)