これなら最初から、浜辺美波をヒロインに据えたほうが良かったのでは? そう感じた視聴者も少なくなかったようだ。
7月5日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第68回では主人公の万太郎(神木隆之介)が、田邊教授(要潤)による専属プラントハンターとして雇いたいとの要請を拒否。田邊教授から「後悔するぞ」と吐き捨てられる場面があった。
万太郎は小学校中退の身ながら、田邊教授の計らいで東京大学の植物学教室に出入りできるようになっていた。その点について「ご恩は忘れてはおりません」と言いつつも、万太郎は「植物学のために一心に働きます」と宣言。田邊教授に対する感謝の言葉にはとても思えなかったのである。
「なかには万太郎の態度について《すっぱりと断れてよかった》との声もあるものの、多くの視聴者は万太郎のわがままぶりに呆れ果てています。大学予備門に通って東大を受けるべきという助言は『遠回り』といって拒否しながらも、自分の見つけた植物に学名が付いたことは素直に喜んでおり、学問を軽視しつつもありがたがる姿勢は、矛盾の塊と指摘せざるを得ないでしょう」(週刊誌記者)
制作側は万太郎の夢を遮ろうとする田邊教授を悪者に仕立て上げたいようだが、視聴者からは<教授の言っていることは真っ当>との指摘も続々。学問の常識に照らせば自分だけ例外扱いを求める万太郎こそわがままの極みであり、視聴者が不快感を抱くのももっともだろう。
その一方で、「らんまん」の視聴率は回を追うごとに上昇。一時期は週平均が14%台に落ち込むこともあったが、6月12日からの第11週では17.1%と上昇し、第12~第13週と続けて17%台をキープしている。これは万太郎の活躍が視聴者に受け入れられているということだろうか?
「各回の内容を吟味すると、視聴率回復の起爆剤が寿恵子を演じる浜辺美波にあることは明らかです。第13週では万太郎が寿恵子を連れて土佐・佐川に里帰りし、祝言をあげました。この週は第61回が16.2%、第62回が16.5%に留まっており、その2回では寿恵子がほとんど活躍していません。一方で艶やかな新婦姿を披露した第65回は17.9%の高視聴率をマーク。結局のところ視聴者は、寿恵子(浜辺)の美しさを愛でたいのでしょう」(前出・週刊誌記者)
実際、週が明けての第14週では第66回が16.9%、第67回が16.6%と、16%台に逆戻り。寿恵子の活躍がないと視聴率が下がるという分かりやすい相関関係を見せているのだ。
最高視聴率の17.9%を記録した回はこれまで全部で3回。前述の祝言シーン(第65回)のほかは、寿恵子が万太郎の祖母・タキ(松坂慶子)と百人一首対決に挑んだ第59回と、寿恵子が舞踏練習会で実業家の高藤(伊礼彼方)を振ってみせた第55回だった。
このように寿恵子が大活躍した回ほど、高視聴率をマークしていることが数字として表れているのである。
「本作は万太郎という男性を主人公に据えた作品ですが、それでは普通のドラマを観ているのと変わらず、朝ドラらしさが感じられません。それに対して寿恵子が活躍すればするほど、視聴者も満足度が高まることが結果として表れています。やはり朝ドラの視聴者は、ヒロインの活躍を見たいのでしょう」(前出・週刊誌記者)
植物学者の万太郎が主人公であることは変えられないが、寿恵子の活躍シーンを増やすことはできるはず。「らんまん」の人気上昇は結局のところ、寿恵子=浜辺の活躍に懸かっているのではないだろうか。