1月31日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第84回では、病床の恋人・愛助(水上恒司)を案じるヒロインのスズ子(趣里)が、産婦人科医に大阪行きを直訴する場面でスタート。予定日まで10日しかないことを理由に不許可となっていたが、この展開に驚く視聴者も多かったようだ。
本作はブギの女王こと笠置シヅ子の生涯をモデルにした作品。スズ子の恋人である愛助は村山興業の御曹司という設定で、これは笠置が吉本興業の御曹司・穎右氏と恋仲だった史実をなぞっている。
笠置は子供を身ごもるも、恋人の穎右氏は生まれた赤ん坊の顔を見ることなく病気で亡くなることに。ドラマのほうでも愛助はすでに東京行きを許可されないほどに病状が悪化しており、どうやら我が子に会えぬまま亡くなることになりそうだ。
この調子だと史実通りと言える内容のようだが、実は重要なエピソードが抜けているという。それは笠置と穎右氏が二人で琵琶湖の湖畔にある旅館に泊まったというものだ。
「闘病のため大阪に帰郷することになった穎右氏に笠置は同行し、琵琶湖の湖畔にある旅館に同宿。この時に穎右氏は歌を口ずさみ、初めて歌声を聴いた笠置は感極まったそうです。ところがこの琵琶湖旅行はドラマではすっぽりと抜けおちることに。帰阪前に二人で訪れた箱根旅行こそ描かれていましたが、どうやら箱根旅行と琵琶湖旅行を一つにまとめてしまったのかもしれません」(芸能ライター)
視聴者のなかにはいつ琵琶湖旅行が描かれるのかと待ちわびていた人もいたはず。ところが今回、スズ子が出産間際となったことにより、そのエピソードがなくなったことが確定してしまったのである。
しかも今回、舞台「ジャズカルメン」を終えたスズ子が3カ月間にもわたり、東京で一人で過ごしていたことが判明。どうしても愛助に会いたいのであれば、舞台が終わった後の安定期こそ大阪行きには絶好のタイミングだが、その貴重な時期がナレーションだけで通り過ぎてしまったのだ。
「あまりにも不自然な時間経過に、視聴者からは《史実改変だ》との不満が出ることに。比べるのも不謹慎ながら、テレビ業界ではいま《原作クラッシャー》が話題になっていることもあり、今回の『ブギウギ』にも《史実クラッシャー》との声があがっています。史実の改変は物語をよりドラマチックに演出するために多少は許容されるでしょうが、琵琶湖旅行というドラマチックなエピソードを飛ばしてしまった演出には納得がいかないとの声が出るのも当然でしょう」(前出・芸能ライター)
そもそも史実では、笠置に歌手を辞めてもらいたがっていたのは当の穎右氏だった。それを本作では、愛助がスズ子の歌手続行を懇願するという大きな違いがある。
そこは愛助を善人に描きたい演出として理解できなくもないが、それならば愛助をさらに魅力的な人物に描くため、琵琶湖旅行は必須だったのではないか。
「スズ子は今回、愛助の病状を隠していたマネージャーの山下(近藤芳正)に対して声を荒げていました。それほど直情的なスズ子が3カ月もの間、一人で東京で過ごしていたという描写にはさすがに無理があります。こんな演出が続けば続くほど、視聴率の向上は見込めそうにもありません」(前出・芸能ライター)
史実を改変するならするで、もっと魅力的な物語にしてほしい。視聴者の願いは制作陣に届くのだろうか。