人間そっくりなロボット(アンドロイド)は、近年、猛烈な進化をとげています。「アンドロイドが人間と同じ“顔”をもった時」(写真右)、彼(?)の暴走を防ぐ手立てはあるのでしょうか?
(写真右は「人間の顔を持ったロボット」のイメージ)
■“顔”ロボット「アメカ」の衝撃
数年前、イギリスで驚くべきロボットが開発されました。そのロボットの名は「アメカ」(ラテン語で“友だち”という意味)。
世界を驚かせたのは、そのロボットの“顔”でした。“顔の皮膚”の下に仕込まれた32個のモーターが連携して、45を超える顔の筋肉部分を操作し、皮膚の動きだけでなく、その下の筋肉、腱、じん帯、脂肪の層まで全ての動きをマネするように作られているのです。
だから、笑う、怒る、泣くなどの表情を、人間と同じようにすることができるし、目やまぶたの微妙な動きまで再現できるのです。
表情だけではありません。AIを搭載したこのロボットは、各国語を話すことができます。その時の口の動きは、人間がその言葉を発音している時と同じ形。たとえば、日本語で「あめ(雨)」と言う時は、「あ」という口の形と「め」という口の形を連動できるという優れもので、アクセントもしっかりしています。
しかも、「私は、日本語をまだ勉強中ですが、ある 程度上手に話すことができます」などと言う。
その顔をメイクすれば、恐ろしいほど人間そっくりになり、いろんな顔をしたロボットをつくることができます。
■進化するアンドロイド(ヒト型ロボット)の“顔”
現在も、アンドロイドの顔は、どんどん進化を続けています。
「アメカ」の顔は、たくさんのモーターによって動いているのですが、「本物の筋肉で顔を動かすロボットの開発が、東京大学で進んでいます(竹内昌治教授)」つまり、モーターの代わりに人間の生体組織(筋肉)を使ったロボットを開発しているわけで、「バイオ・ハイブリッド ロボット」と呼ばれています。
このロボットの“顔”は、人工培養したヒトの筋肉でできていて、それを「生体に微弱に流れる電気信号」を使って動かすというもので、非常に少ないエネルギーで、“ヒトの顔”の微細な表情を静かに、柔らかく表現できるアンドロイドを作ることも可能になりました。
大阪大学では、非常に進化したアンドロイドがつくられています。顔だけでなく、すべての身体表現が、人間に似せて作られていて、呼吸の動きまで忠実にでき、「実際の人間と見分けがつかない」ほどなのです。
フェイクの映像ではなくて、写真右のような人と見分けのつかないロボットが、“実際に”目の前にいる場合、彼は私たちの味方なのか敵なのか?そもそも、人間なのかロボットなのか?
■ロボットは「自分で自分を改造して」…“神”になる。
「アメカ」や「アンドロイドやバイオ・ハイブリッド」などは、人間に追いついたのでしょうか」。
「アメカ」開発者の1人(ウィル・ジャクソン氏)はこう言っています。
「研究をすればするほど人間のすごさに驚かされます。人間の脳力をすべてもつロボットを作ることは“不可能”でしょう」
ところが、今や事態は激変。「人間がロボットを作る時代」は、終わろうとしているのです。ロボットがロボットを作る時代が来ようとしています。人間以上の脳力を得たロボットたちは、「自分で自分を改造し始める」のです。
その結果、またたく間に、人間の能力を追い越します。「ロボットによる、ロボットの進化」は驚異的で、アンドロイドたちは、あっという間に「神」の領域にまで達するのではないでしょうか。
今、そうならないための様々な方策が、実際に講じられています。
次回は、「ロボットの反乱」。“その日”の恐怖と可能性についてお伝えします。反乱をおさえるため、「ロボットの“顔”に“心”を注入する」ことができるのでしょうか?
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」