Q:4歳の息子と2歳の娘のママです。買い物は2人の子供を連れて行っています。娘はしっかり歩けるようになったのが嬉しいのか、ベビーカーに乗るのをイヤがるようになりました。結果、ベビーカーを押しながら娘と手をつなぎ、息子にはベビーカーの一部を握らせ、歩いています。先日、横断歩道の前で信号が青になったら、息子はベビーカーから手を放し、先に渡ろうとしたので「行っちゃダメ」と注意したら、ふてくさてしまいました。その後も言うことを聞いてくれません。どう、息子を扱ったらいいのか、わからなくなってしまいました。
A:「子どもをどう育てたらいいかわからない」そんなふうに、ほとんどの親御さんは、育児に悩みを抱える時期を必ず迎えます。それは、一度や二度ではないでしょう。乳幼児期には、泣きやまない、いつまでもぐずって眠ってくれない、ごはんをちゃんと食べてくれないなどなど、親御さんの悩みは尽きません。
慣れない育児に戸惑い、子どもに振り回されてストレスを溜め込み、“ダメな母親だ”と自分を責めて落ち込み、軽いうつ状態で来診する患者さんも少なくありません。
さて、今回のケースで、息子はどのように考えて行動しているのか考えてみましょう。彼にとっては「目的地はわかっている」→「信号は青だ」→「青だから渡れる」→「だから行こう」。それなのに叱られてしまい、「青なのにどうしてダメなの」と考えて混乱し、お母さんがどうして怒っているのかわかりません。
お母さんの気持ちとしては「危ないから先にひとりで行かないで待っていてほしい」です。でも、言葉として発したのは「行っちゃダメ」の一言でした。これでは子どもには伝わりません。
人はよく「思っていることは言葉にしてくれなきゃわからない」といいます。その通りなのです。エスパーのように以心伝心とはいきません。まして、言葉を覚えたての小さな子どもなら、きちんと説明しなければ理解できません。逆に、きちんと説明すれば理解できるのです。
育児に悩む方が来診した時に、私が必ずたずねる質問があります。
それは子供に対し「あなたのパパ、ママが私でよかったね、と思えるかどうかを考えてみてください」という内容です。自分たちのもとに生まれてきて、私たちに育てられるこの子は幸せだ、と思えるかどうかを考えてみてください。
対峙している相手が自分といて幸せだと思えるということは、ご自身が相手を尊重し大切にしていることに他ならないからです。このような考え方は、親子関係だけでなく、パートナーや友達、すべての人間関係において当てはまります。
子供たちの年齢は、パパやママが親になってからの年月でもあります。日々成長していく子供の保護者として、育児は初体験のことばかり。つまりは、新米なのです。
ただ、どんな大人にも子供だった経験はあります。自分が幼かった頃、親に対してどんな風に思っていたでしょうか。そんなことを思い出しながら、子供の心理状態を考えれば、育児は楽になります。親御さんの言動を子供はどのように解釈しているのかを知れば、親としてどう接すればいいのかが見えてくるからです。
(監修・ストレスケア日比谷クリニック 酒井和夫院長/取材・文 李京榮)