あれ、この声って…。そう思った視聴者も多かったようだ。
5月17日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第39回では、春子(小泉今日子)が高校生だった昭和59年(1984年)、オーディション番組に送るためのデモテープを録音している様子が映し出された。その場面に違和感を抱く人もいたという。
高校当時の春子(有村架純)はアイドルになりたいとの夢を抱き、様々なオーディションに応募。人気オーディション番組「君でもスターだよ!」のテープ審査に合格し、東京NYBSテレビで行われる公開収録に臨むことになった。
春子がテープ審査用に録音したのは村下孝蔵の「初恋」。本当は松田聖子の歌にしたかったものの、漁協から借りた8トラのカラオケ機械には聖子ちゃんの曲がなく、前年の1983年に大ヒットした「初恋」を歌ったという。この場面が別の意味で注目を集めていたのである。
「春子(有村)がいざ歌い出そうとすると、母親の夏(宮本信子)が部屋に入ってきて録音は中断。あらためて歌い直したところで場面は現在へと移り、北三陸市の面々がデモテープに聴き入っているシーンに替わりました。そこで歌声が流れ始めると、視聴者から《これ有村架純じゃないよね》《キョンキョンが歌っている!》との指摘が続出。どうやらデモテープで歌唱していたのは高校生の春子を演じる有村ではなく、大人になった春子を演じている小泉だったのです」(芸能ライター)
※以下、ネタバレ注意※
デモテープを小泉が歌っていたことには、ちゃんとした理由がある。「あまちゃん」ではこの後、春子のアイドル時代が描かれ、本作とのコラボで2013年7月にリリースされた楽曲「潮騒のメモリー」も歌われる。
その「潮騒のメモリー」を歌っていたのが誰あろう、小泉だったのである。アイドルの楽曲となればやはり、本職のアイドルが歌うのが筋というもの。それゆえ本業が女優の有村ではなく、大人気アイドルだった小泉が歌っていたのは当然であり、作中の一貫性を保つためにも、「春子が歌うシーン」ではすべて小泉の歌声を使っていたわけだ。
「一部の視聴者からは《有村は音痴だから》という陰口も出ていますが、有村自身はけっこう歌が上手いことで知られています。2018年にはテレビCMでブルーハーツの『情熱の薔薇』を歌っていますし、菅田将暉とダブル主演した映画『花束みたいな恋をした』では、公式YouTubeチャンネルにて菅田と一緒にカラオケを歌う姿を披露。アルトな低音でBUMP OF CHICKENの『クロノスタシス』を歌いこなしており、歌唱力は決して低くありません」(前出・芸能ライター)
このようにデモテープを有村ではなく小泉が歌っていたのは歌唱力の問題ではなく、ストーリー上の必然だったのである。ちなみに2013年末のNHK紅白歌合戦で行われた「あまちゃんコーナー」では、小泉自身が「潮騒のメモリー」を歌っていた。どうやら有村自身の歌声は本作において、幻となっていたようだ。