これだけ大騒ぎになる背景には、世代ならではの理由もあるようだ。
夫のキャンドル・ジュンが記者会見を開いたことで、新たな段階に踏み込んだ感のある広末涼子の不貞スキャンダル。不貞相手のレストラン経営者・鳥羽周作氏も含めて個性の強い面々がそろっていることもあり、世間をにぎわせている。
なかでも今回のスキャンダルに大きく反応しているのが、広末と同じ1980年(昭和55年)生まれを筆頭とした1980年代生まれの人たちだという。40代を迎え、年齢的には社会を支えるボリュームゾーンにある世代ゆえ、同世代の広末がしでかした不始末に注目が集まるのも当然だ。
だが1980年代生まれの人たちが今回のスキャンダルに注目する背景には、世代ならではの理由があるという。
「1980年7月生まれの広末は中3だった1995年にニキビ治療薬のCMでデビューし、『あの美少女は誰だ!?』と瞬く間に話題に。翌年に高知から上京し、『広末涼子、ポケベルはじめる』のCMで不動の人気を獲得しました。そんな広末の登場は、1980年生まれの若者たちに『自分たちの世代を代表する著名人』という意識を強烈に植え付けたのです」(週刊誌記者)
広末と同じ1980年代生まれの若者たちは、自分の世代が何者なのかというアイデンティティの喪失に悩んでいたという。
年上たちは1940年代が「団塊の世代」、1950代が「しらけ世代」、1960年代が「新人類」、そして1970年代が「団塊ジュニア」という、それぞれの世代を的確に表す言葉を持ち、世代同士の目に見えない結束も強かったもの。
それが1980年代はこれといったキャッチフレーズが付けられることもなく、一応は2000年に二十歳を迎えることから「ミレニアル世代」との名称もあるものの、それは当人たちにとってピンとくるものではなかった。
一方でバブル崩壊に伴って発生した「就職氷河期」は、1970年代生まれの世代から始まり、1982年生まれごろまで継続。小学生のうちから世間が就職氷河期になっていた1980年生まれは、生まれながらにして就職に希望を持てない世代でもあった。
「1980年生まれの著名人にはEXILEのATSUSHIやお笑い芸人の又吉直樹、グラドルの優香や小池栄子らがいます。いずれ劣らぬ著名人ばかりですが、彼らが活躍し始めたのは成人になってからのことで、同世代が中高生だったときにはまだ『時代のスター』が存在していませんでした。その中ですい星のごとく現れ、1980年生まれの星となったのが広末だったのです」(前出・週刊誌記者)
同じ1980年生まれにはもう一人、若きスターがいた。横浜高校を甲子園優勝に導いた怪物・松坂大輔だ。甲子園で初めて時速150キロの剛速球を投げ、3年夏の決勝ではノーヒットノーランを達成。同い年の高校生たちは男子の松坂、そして女子の広末に、自分たちの夢を託していたのである。
その松坂はプロ入り後の3年間で45勝、西武在籍の8年間で108勝という実績を積み上げ、MLBレッドソックスに移籍。最初の2シーズンこそ15勝、18勝と大活躍するもの、その後の10年間は日米を通して10勝に届く年はなく、最後は2年連続勝利なしのシーズンを過ごしたうえで引退していた。
1980年生まれにとっては、自分たちのスターだった松坂でさえ、30歳以降は見るべき活躍がなかったことに落胆。その気持ちが女優として活躍を続け、母親としても3人の子供を育てている広末一人に向かったのである。
「広末は42歳になるまで、1980年生まれの人たちにとってスターであり続けました。その大スターがまさかの不貞スキャンダルを起こしてしまったことに、同世代の人々は大きなショックを受けたのです。今回の一件で広末は今後、しばらくは女優活動もままならなくなることは確実。それは1980年生まれにとって、松坂に続いて『自分たちのスター』が失われることを意味しています」(前出・週刊誌記者)
広末とて、自分から「1980年生まれの旗手」を買って出たわけではなく、気が付いたら自然とその立場に祭り上げられていたようなものだ。だが自らの招いた不祥事でその立場を失うことになった今、自分の立ち位置がどれほど貴重なものだったのかに、あらためて気づかされているのかもしれない。