このセリフにも時代設定の妙が感じられたのではないだろうか。
7月12日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第87回ではヒロインのアキ(能年玲奈)が、東京・上野の街なかでユイの母親・よしえ(八木亜希子)を発見したことで悩みまくる姿が描かれた。そんなアキにマネージャーのミズタクこと水口(松田龍平)が掛けた言葉に、視聴者が大いに感心していたという。
地元の岩手・北三陸で行方不明となり、捜索願も出されているよしえ。そのよしえが男性と一緒に歩いているころを見つけてしまったアキは、北三陸に留まっている親友のユイに思いを馳せ、「せめてオラとユイちゃんの立場が逆だったら」と、一人だけ上京してきた自分のことを責めていた。
するとミズタクは「そういうもんかもしれない」と前置きしつつ、世の中を動かしているのは一番可愛い子や一番才能のある人間じゃなくて「二番目なんじゃないかって思うんだ」との持論を口に。二番目の人間が一番目の人間に対して恥ずかしい姿を見せたくないと頑張った時に、成功するのではないかとの考えを示していた。
「そんなミズタクの言葉に、蓮舫参議院議員の言葉を思い出した人も多かった様子。2009年11月に行われた事業仕分けの際、スパコンの開発予算を巡って『2位じゃダメなんでしょうか』と語ったセリフは日本の政治史に残る発言として広く知られています。作中の時間軸はアメ横女学園の国民投票が間近に迫った2009年12月となっており、まさに蓮舫議員の発言が世間に生々しい記憶を残している時期でした」(芸能ライター)
蓮舫議員の「2位」発言は世間から猛烈な批判を浴び、現在もなお、ことあるごとに蒸し返されている。「あまちゃん」が放送された2013年当時には今よりも、その余韻は強く残っていたことだろう。
一方でミズタクの発言は一見、蓮舫議員の「2位じゃダメなんでしょうか」を肯定しているように感じられなくもない。だが実際のところは、世間と同じように「2位」発言に対する強烈なアンチテーゼになっているとの指摘もあるようだ。
「ミズタクの発言は、可愛さや才能で2位の人間が発奮することにより、当初の順位を逆転できるという芸能界の一面を言い表しています。すなわち2位に甘んじろという意味ではなく、2位の人間には1位になれる可能性があるとアキに諭していたわけです。これは言うなればあまちゃん流の『2位論』であり、蓮舫議員の発言とは趣旨が大きく異なっていることは明らかでしょう」(前出・芸能ライター)
果たしてアキはアイドルの世界で上に行けるのか。そもそも2位ですらない彼女がこれからどんな奮闘を見せてくれるのか。マネージャーのミズタクと同様に、視聴者も期待の目でアキを見ていることだろう。