【あまちゃん】アキが鈴鹿ひろ美の質問に動揺して口にした「母ちゃん」の三段活用とは!

 こんな表現方法もあるのか。視聴者も思わず感心していたようだ。

 7月25日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第98回で、ヒロインのアキ(能年玲奈)が大きく動揺している姿が映し出された。それは付き人をしている女優の鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)から、母親について訊ねられた場面だ。

 ひろ美はアキに「天野さんのお母さんってどんな人?」と質問。19歳の若者を付き人にしているベテラン女優にとっては、ごく一般的な疑問だろう。

 しかしアキはその質問に動揺。若かりしころの母親・春子(有村架純)は、ひろ美の影武者としてデビューシングル「潮騒のメモリー」などをレコーディングしていたからだ。

 そんなことはつゆ知らず、「肝っ玉? それとも病弱?」と畳みかけるひろ美。ここでアキが絞り出した答えに、彼女の同様ぶりが大きく示されていたという。

 アキはまず「歌がうめえお母さんです」と説明。続けて「歌がうめくて、かっけえ母ちゃんです」と明かしていた。ここでひろ美が「海女さんじゃないのね?」と訊ねると、アキは「海女は祖母です。母は海女になるのがイヤで東京さ出て」と説明していた。

「多くの視聴者は、アキがここで『か、歌手を目指していた時期もあります』と明かしたことに注目していたことでしょう。一方でアキが口にしたセリフには、絶妙な技が隠されていました。それはアキが母親について『お母さん』『母ちゃん』『母』と3種類の呼び方をしていたことです」(芸能記者)

 ひろ美に気に入られているアキは、付き人にもかかわらずタメ口で話すことも多い。普段の会話ならいつも通り「母ちゃん」と呼んでいたはずだ。

 それに対して今回の会話では最初に「お母さん」と呼んでいた。もっともここは、ひろ美が「お母さんってどんな人?」と訊ねたことに対する反応だったのかもしれない。

「ところが3度目には『母』というかしこまった表現に。その直前に『海女は祖母です』と説明したのを受けての発言と思われますが、普段のアキなら『海女は夏ばっぱだあ』と答えていたはずです。タメ口でしゃべる人が急に敬語になるのは、本心を隠しているケースが多いもの。この場面でアキは、言いたくても言えない秘密を隠していることを、自らのセリフで示していたのでしょう」(前出・芸能記者)

 朝ドラ史に残る傑作との呼び声も高い「あまちゃん」では、脚本を担当した宮藤官九郎の手腕も高く評価されている。本作では田舎の北三陸と都会の東京を対比し、親子三代にわたる確執と和解を織り交ぜるなか、セリフの妙も高評価のポイントだ。

 今回のアキとひろ美のやり取りでも、一連の会話のなかにタメ口と敬語が入り乱れており、アキの混乱ぶりを言葉遣いで表していた。めったに敬語を使わないアキが敬語を使うときには、裏側に何かが隠されている。視聴者もそんな法則を楽しんでいるに違いないだろう。

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