携帯電話の電気代なんて、たかが知れてるんじゃ? そう思えるのは今が2023年だからなのかもしれない。
9月12日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第140回では、ヒロインのアキ(能年玲奈)が津波で打ち上げられた漁網からミサンガを作ることを発案。祖母・夏(宮本信子)の後押しもあり、袖が浜の海女たちがミサンガ作りに精を出す姿が描かれた。
完成したミサンガを遠距離恋愛中の種市先輩(福士蒼汰)に送ったアキ。しばし彼氏との会話を楽しんだアキが電話を切ると、夏は「電気代も電話代ももったいないべ」と注意を促していた。この場面、本放送当時の2013年にはとくに違和感なく受け入れられていたというのである。
「学生など若い人は覚えていないかもしれませんが、震災後は東日本の各地で『計画停電』が行われました。それも震災直後のみならず、4カ月後の7月になっても計画停電の計画が電力会社から発表されていたのです」(週刊誌記者)
被災した福島第一原発を抱える東京電力の管内では、2011年3月14日~28日に計画停電を実施。電車が間引き運転されるなど、その影響は広範囲にわたっていた。
一方で被害の大きかった東北電力管内では震災直後、工場の閉鎖などで電力需要も大きく落ち込んでいたことから、計画停電は行われなかった。
しかし冷房などで電力需要が大きくなる夏を迎え、東北電力と東京電力では大口需要家に対して電気事業法に基づく電力使用制限を発動。7月~9月に実施されたほか、一般家庭でも節電が大きく叫ばれていたのである。
「本放送の2013年にはまだ計画停電の記憶も生々しく、作中の7月に夏ぱっぱが電気代について苦言を呈する理由も視聴者にはすぐ理解できました。それが震災から10年が経った現在は計画停電を知らない若者も増えたほか、当時の記憶が薄れた人も多く、夏ぱっぱがなぜ携帯電話程度の電気代を気にするのか、ピンとこないとの声も増えているようです」(前出・週刊誌記者)
作中では夏が昭和35年(1960年)に発生したチリ地震の体験を語る場面もあった。当時15歳だった夏は、地球の裏側で発生した津波が三陸海岸に到達した様子を昨日のことのように覚えているのだろう。
今回の「あまちゃん」再放送を巡っては、震災の記憶を語り継ぐ重要性を指摘する声もある。夏が携帯電話の電気代を気にする理由を、2023年のいまあらためて実感することには、大きな意味がありそうだ。