だから前回は、あんな不自然な展開だったのだろうか。
9月26日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第127回では、主人公・槙野万太郎(神木隆之介)の妻・寿恵子(浜辺美波)が急須を落として割ってしまう場面が描かれた。娘の千鶴(本田望結)によると以前にも同様のことがあったそうで、どうやら寿恵子は病に侵されているようだ。
万太郎は「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎博士をモデルとした物語で、牧野博士の妻・寿衛は昭和3年に亡くなっている。奇しくも物語は昭和2年まで進んでおり、万太郎に理学博士号取得の話が持ち込まれたのは、史実に沿ったストーリーだ。
そうなると次回以降に、ヒロインとして作品を支えてきた寿恵子が亡くなってしまうのは確実。多くの視聴者は「らんまんロス」より前に「寿恵子ロス」に陥ってしまうことだろう。だからこそ、前日の第126回がいささか不自然な描写になっていたとの指摘もあるようだ。
「第126回では万太郎の亡くなった後の槙野家が舞台となり、娘の千鶴が父親の遺した膨大な資料を整理するため、藤平紀子(宮﨑あおい)なる人物をアルバイトに雇っていました。その回では千鶴が亡き父を回想し、その様子は最終回さながら。視聴者からは『まだ月曜日だよね!?』といった疑問の声もあがっていたのです」(テレビ誌ライター)
まだ4回の放送を残している時点でなぜ、最終回さながらの描写となっていたのか。その理由は翌日の第127回で明らかになったというのだ。
本作が牧野博士の生涯をモデルにしている以上、妻の寿恵子が万太郎より先に亡くなってしまうのは既定路線だ。しかし万太郎以上の存在感を示していた寿恵子が物語から退場すれば、視聴者が大きな喪失感を味わうのは確実。そうなると最終回に向けての大団円を描きづらくなるのではないだろうか。
「そこで万太郎が亡くなった後の様子を先に描いておけば、視聴者も『寿恵子亡き後の世界』を受け入れやすくなるはず。展開としていささかの不自然さは否めないものの、寿恵子が亡くなるシーンを飛ばすわけにもいかず、あえて『槙野夫妻の没後』を先に見せておくことにしたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
第126回にて年老いた千鶴(松坂慶子)が万太郎を回想することにより、視聴者も最終週では「らんまん」のこれまでを回想することができるというもの。そして万太郎の祖母・タキを演じた松坂が今度は万太郎の娘として登場することで、人の想いが連綿と繋がっていることも表現できたのだろう。
果たして次回以降、視聴者は「寿恵子ロス」を受け止めることができるのか。半年間続いてきた物語が悲しみで終わらないことを願う人も少なくなさそうだ。