塚地武雅はどこまで瞬時に変容する気だろうか。NHK朝ドラ「虎に翼」で雲野法律事務所の代表でお人好しな弁護士・雲野六郎を演じていたかと思えば、放送中の「新宿野戦病院」(フジテレビ系)では韓国語、中国語、タイ語などの外国語が堪能な性別不明の「聖まごころ病院」看護師長・堀井しのぶをしゃらんと演じている。
7月31日放送の第5話では、「虎に翼」にて雲野法律事務所で働く岩居弁護士を演じていた趙珉和が、交際中のカヨ(臼田あさ美)の娘・マユ(伊東蒼)に折った割りばしで脚を刺されるシンゴとして登場。塚地演じるしのぶに怒鳴るシーンがあったため、「雲野先生と岩居が令和に転生して絡んでいる」とネット上で話題なった。
お堅い岩居弁護士を演じていた趙が、超クズ男のシンゴを演じていることもすごいことだが、やはり性別を超えたキャラクターを難なく演じている塚地は、お笑いコンビ・ドランクドラゴンでネタ作りを担当し、コントをすることが本業だと忘れてしまいそうになるほど、すさまじい役者になったと思う。
最近は、どんなキャラクターでも自分のモノにして演じる憑依型俳優のことを「カメレオン俳優」と呼ぶようになったが、塚地のことはカメレオン俳優の上をいく「おゆまる俳優」と呼ばせていただきたい。「おゆまる」とは、温めると柔らかくなってどんな形にもなるが、冷えて硬くなるとスーパーボールのように弾む特性があるプラスチック粘土のこと。レジンやプラモデルをたしなむ人はオリジナルパーツ制作のための「型」として利用したり、「おゆまる」そのもので精密なパーツを作ってアクセサリーやスマホケースなどを制作したり、子どもなら色の違う「おゆまる」で好みの色を作って粘土遊びをしたり、使う人によって無限の使い方ができる画期的な粘土なのだ。
塚地を「おゆまる俳優」と呼ぶ理由をご理解いただけただろうか。茶髪のショートカットヘアにオレンジピンクのリップ、ピンクのナース服を着たかわいい塚地…ではなく、かわいい堀井しのぶに会えるなら、新宿・歌舞伎町で熱中症になって倒れるのもいいかなと思う。
(森山いま)