神木隆之介が主演で二役を演じた日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)が12月22日、2時間スペシャルで最終回を迎えた。平均世帯視聴率は関東地区で8.3%だった。ドラマウォッチャーが振り返る。
「炭鉱の島である長崎県端島が最盛期だった1950年代と現代を結んだ70年に渡る壮大な家族と愛の物語でした。神木が1人2役で主演することもあって放送開始前から大きな話題になり、10月20日放送の初回の平均世帯視聴率は11.0%と上々の滑り出しでしたが、結局10%以上だったのは最初だけ。12月1日放送回では6.7%にまで落ち込んでしまったんです」
これは、日曜劇場の前作にあたる7月期放送の「ブラックペアン2」(主演・二宮和也)の全話通じての平均視聴率が11.3%だったことを考えると、「海に眠る―」の全話平均視聴率が8.3%だったことはやや期待はずれだったと言われても仕方がないかもしれない。
「SNS上では神木演じる現代の接客を伴う夜の店の従業員の玲央と端島で生きた荒木鉄平がどんな関係なのかを中心に考察が盛り上がりました。そうした声に反して視聴率が伸び悩んだ大きな原因は、放送休止回や遅延回が重なったことも要因の一つでしょう」(前出・ドラマウォッチャー)
初回翌週の10月27日は衆院選特番で放送休止。第2話放送日の11月3日はプロ野球日本シリーズの中継で放送開始が遅れ、翌週以降も世界野球プレミア12の放送などの影響を受ける。そして最終回は「M-1グランプリ決勝」(テレビ朝日系)と放送時間帯が被ってしまった。
「ただ、視聴率伸び悩みの原因はそうした放送日程上の“不運”だけではないでしょう。現代と過去を行き来する展開に、日曜劇場のメイン視聴者層である中高年層にとってはわかりづらかったのかもしれません。端島パートと現代パートの人物の関係性を探る考察はネット上で盛り上がってはいましたが、現代パートのストーリーが少し弱かった。登場人物は玲央といづみ(宮本信子)、それにいづみの家族である池ヶ谷家の面々が中心で、それ以外はほぼチョイ役。IKEGAYAの会社の方針を巡って家族内、社内で対立が起きますが、その部分の描き方が甘く、ドラマとしての重厚さは薄味になってしまった印象です」(テレビ誌ライター)
視聴率が10%超えが初回のみで、常時10%を超えた「ザ・トラベルナース」(テレビ朝日系)や、ほぼ10%を超えの「相棒」(テレ朝系)にも遅れをとってしまった。
「TVerのお気に入り登録人数も『わたしの宝物』(フジテレビ系)、『ライオンの隠れ家』(TBS系)、『放課後カルテ』(日本テレビ系)といった100万人超えを達成した作品に次いで第4位。100万人達成はなりませんでした。とはいえ、端島という特殊な環境で炭鉱員やその家族がどんな暮らしをしていたのが垣間見られた部分は大きく評価すべきで、端島パートの登場人物の内面も掘り下げられていました。やはり、視聴者の興味を引っ張るためなのか、謎を謎のままにするような考察に重きを置きすぎたのが失敗だったのでは」(前出・テレビ誌ライター)
鉄平と玲央の関係が視聴者の興味を引っ張り続けてはいたが、最終回で鉄平の動画を見たいづみは、玲央に向かって「似てないね」。そもそもいづみに「鉄平に似ている」という理由で巻き込まれてしまった玲央が鉄平と同じ役者が演じているのに視聴者としては肩透かしを食ってしまった気持ちになってしまったようだ。
「視聴者が考察で盛り上がるような作りのドラマが昨今のトレンドでした。が、『海に眠る―』で、そろそろ飽きられてしまうのでは」(前出・ドラマウォッチャー)
やはり、今後はドラマの素材となる事柄に対する徹底した取材や登場人物の設定の掘り下げに立ち返り、いたずらに考察を促すような展開に頼らない、王道のドラマ作りの復活を望みたい。
(石見剣)