動物園に来るのは何年ぶりだろうか?息子や娘が小さい頃はよくせがまれて行ったものだが、すっかり足が遠のいてしまった。
今回、訪問したのは栃木県那須郡にある「那須どうぶつ王国」。24年に国内の動物園では初となる“幻の白いオオカミ”ことホッキョクオオカミの繁殖に成功し、愛らしい親子の姿が見られると聞いたからだ。
東北新幹線那須塩原駅から無料シャトルバス(予約制)に乗り、約1時間10分で到着。園内は東京ドーム約10個分の広さで王国タウンと王国ファームの2エリアがあり、世界から集まった600頭以上の動物が暮らしている。
さっそくオオカミの丘へ直行して、ホッキョクオオカミの親子とご対面だ。実は、子オオカミはオスとメスが1頭ずつ誕生したが、約2カ月後にオスが死亡。メスも歩行時にふらつきが見られたが、筋肉がつくことで解消されたそうだ。真白と命名された子オオカミはひと回り小さく、母オオカミの足元で木の枝をかじりながら遊んでいた。
針葉樹を植え、滝なども設けて生息地であるシベリアの環境を再現した放飼場を闊歩するアムールトラ、ほのぼのと温泉に浸かるカピバラ、親子で泳ぐアメリカンビーバーなど、どの動物もイキイキしていて見ているだけでほっこりする。
スナネコ、アムールヤマネコ、ニホンライチョウ、ツシマヤマネコ(一般公開未定)など、絶滅に瀕している動物や希少種を飼育する〝保全の森〟を見たら、眺望抜群の屋内レストラン・ヤマネコテラスでひと休みだ。
「ツシマヤマネコは長崎県の対馬だけに生息する野生のヤマネコで、田んぼのカエルやネズミ、鳥などを捕食しています。この店ではその田んぼで収穫される佐護ツシマヤマネコ米を使い、皆さんに食べてもらうことで、田んぼの維持・拡大に協力しています」
動物愛があふれる同園の社長・鈴木和也さんがそう教えてくれた。人気のヤマネコランチには猫顔の米粉パンが乗り、食べるのがためらわれるが、これもツシマヤマネコのためとかぶりついた。
食後はワンニャンバスに乗り、王国ファームへ。スカイスタジアムやイベント広場では、動物たちのパフォーマンスが行われる。中でも、タカ、ワシ、ミミズクなどの猛禽類が頭上近くを飛び回る「BROAD」は圧巻。見上げる鳥たちの姿は格好よく、少し怖くもある。猛禽類に狙われた小動物の恐怖がわかった。
内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。