Q:スーパーで果物やお菓子に手を出した3歳の息子を止めようと手をあげて叱ってしまいました。子どもは驚いたのか、号泣。店内のお客さんの注目の的になって、冷たい視線を向けられました。こちらを見て、ヒソヒソ話をするオバさんたちもいて、怖くて外で子どもを叱れなくなりました。そのぶん、家の中で厳しく言うようになりました。
A:人の多い場所であっても、子どもが悪いことをしたら注意する。人目を気にしてなかなかできないことだと思いますが、子どもは悪いことをしたらその場で言わないと理解できないので、お母さんの行動は間違いではありません。
ひとつお伝えしたいのは、子どもを叱る時、なるべくなら叩かないでほしいということです。まして、スーパーという公共の場なら、なおさらです。小さな子にも自尊心があり、公衆の面前で叩かれたら、傷つきます。
本来、家の中は心休まる場所。外では子どものやりたい放題で、家の中で厳しくしつけようとするのはナンセンスです。3歳ともなれば、走ったり何かを触ったりすることが新鮮で楽しくてしょうがない時期。子どもの好奇心を押さえることは難しいですが、「基本的に商品に触ってはいけない」、「多くの人がいる公共の場では、お母さんのそばを離れない」、「今日のお買い物はお母さんだけよ」と事前に約束として子どもに話します。外に出ることは、社会でのルールや我慢を教えるいい機会なのです。
この場合、考えてほしいのは、スーパーやデパートは人々の購買意欲を高めるために、様々な工夫がされている場所だということです。つまり、子どもにとってはワンダーランドであり、アミューズメントパークでもあり、お菓子の国のようにワクワクする場所です。
商品を手に取ることに悪気がないからこそ、親は悪いことだと教えなくてはなりません。その場でうやむやにして、後で叱っても、子どもはどうして怒られているのか、うまく頭の中で整理できません。良くない事をしたら、その場で悪い事だと教えましょう。外では親に叱られないと知ると、子どもは、どこまでやれば叱るのか?と、親を試すようになります。そうならないために、子どもに「悪いこと」を認識してもらうためにも、その場で叱ることが重要です。
そして、いつも「ダメ」ではなく、「今日は日曜日だから1つだけ好きなものを買ってあげるよ」など、プラスの約束事もしてください。それによって、ルールを守ることは我慢だけ、マイナスだけではないことを知るようになります。それでも目に余るいたずらをしてしまったら、その場で叱ることは保護者の大切な役目です。子どもは、善悪を理解することができますからね。
ただし、大声を出したり、いきなり手をあげるのではなく、“勝手に商品に触ったのは、約束を守らなかったからいけないことだ”と、叱る理由を説明してください。
やさしく言い聞かせたつもりでも、子どもが泣き出して周囲の耳目を集めてしまうことがあるかもしれません。この際、周りの人は、自分が子どもを言い聞かせられるかを見ている観客だと割り切って、自信を持って叱りましょう。そのくらい、子どもの行為をその場で正すことは大切なことなのです。
また、このケースの場合、家の中でだけ厳しく叱っていると、子どもは「家の中だけいい子にしていればいい」という考えを持つこともあるので注意が必要です。
(監修・ストレスケア日比谷クリニック 酒井和夫院長/取材・文 李京榮)