ヒトの脳には、顔と直結している「顔領域」という神経ネットワークが、主要な部分だけでも3カ所あり、「紡錘状回(ぼうすいじょうかい)顔領域」「後頭顔領域」「下側頭回(かそくとうかい)」などと呼ばれています。これらは“顔認識”の専門領域で、顔に関する情報処理を役割分担して行う“脳の特別な部分”です。
(写真は“顔パワー”のイメージ)
■“顔と心(脳)”は「顔領域」で結ばれている
3つの「顔領域」は、いずれも大脳皮質の底にあり、視覚野と近く、視覚情報をいち早く受け取りやすい場所にあります。もちろん、“顔(表情)”の認識は脳の全体で行われているのですが、この3カ所は、特別に“顔(認識)細胞”が集中している部分です。“顔と脳”は、これらの「顔領域」の巨大な神経ネットワークで、しっかりとつながっています。この3カ所は「“顔と心”がつながって“一つの意識体”となっている」 象徴的な部分なのです。
■“顔と心”は、お互いをコントロールする
ヒトは「悲しいから泣く」のか「泣くから悲しくなる」のか、という疑問に対する答えを覚えていらっしゃいますか?脳科学の出した結論は「どちらも起きている」でした。
「えがお」で考えてみると、私たちは「うれしいと『えがお』になります」が、「『えがお』をつくるとうれしくなる」のです。このことは、私たちにとって、「とても大きな意味」を持っています。「“その心”になれば“その顔”になる」 し、逆に、「“その顔”をすれば“その心”になれる」ということ。「心は顔を、コントロールしている」 し、逆に「顔は心を、コントロールできる」ということが、科学的に証明されたのです。
■世紀の大発見“顔パワー”
これってものすごい気付きですよね。私はこの顔の特別な能力を“顔パワー”と名づけています。実は、この“顔パワー”は、くふうしだいで私たちの人生全般に応用が可能です。しかも、顔で「心」だけでなく「幸せ」や「運命」や「性格」までがコントロールできてしまうのです。
私たちは昔から、こんな“顔パワー”に気づいていたのではないでしょうか? なのに、なぜこれまで、ちゃんと活用してこなかったのでしょうか?もったいない話です。この「人生を動かす“顔”パワー講座」では、これからも、たくさんの「人生を好転させるための“顔のトリセツ”」を、科学的論拠もしっかりと説明しながらお伝えしていきたいと思います。
■“顔と心”を切り離しては「生きていけない」
“顔と心”が、お互いをコントロールできなくなった場合のことを考えてみましょう。
一時的に「顔面マヒ(表情筋がマヒして顔が動かなくなる)」という症状になった人のケースをご紹介します。その人は、「自分自身が理解できなくなる」というのです。“顔というコントローラー”が機能しなくなる(顔の表情が停止する)と、心は、自分自身の理解も表現も、できなくなるというのです。そして、その逆、「心は、どんなに隠そうとしても必ず顔にあらわれる」という事例。
「ウソをつく」場合、心(脳)は、「ウソをついているというストレス」 を顔に発信します。そして、どんなに隠そうとしても、それは顔にあらわれるのです。一瞬(0.2~0.5秒)、ウソが顔にあらわれるのです。これを「微表情」と呼んでいます。この「微表情」を素早く読みとれば、相手のウソは見破ることができます。そのようにしてウソを見破る達人もいますし、「微表情」を読み取るための指導書も出回っているのですが、実は我々は、本など読まなくても、相手の顔にあらわれたウソの兆候を読みとっているはずなのです。「話し相手の顔が、何か怪しいな」という感覚がそれです。
このように、心は顔にあらわれ、顔の表情は、心に反映します。“顔と心”は、きっちりと結びつき、お互いをコントロールしているのです。このことは誰でも自分で確かめることができます。
次回、実際にやってみましょう。“顔パワー”が実感できます。
●プロフィール
なかむら・かつひろ1951年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業後にNHK入局。「サンデースポーツ」「歴史誕生」「報道」「オリンピック」等のキャスターを務め、1996年から「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)ほか、テレビ東京などでワイドショーを担当。日本作家クラブ会員。著書に「生き方はスポーツマインド」(角川書店)、「山田久志 優しさの配球、強さの制球」(海拓舎)、「逆境をチャンスにする発想と技術」(プレジデント社)、「言葉力による逆発想のススメ」(大学研究双書)などがある。講演 「“顔”とアナウンサー」「アナウンサーのストップ・ウォッチ“歴史館”」「ウィンウィン“説得術”」