【まぐだら屋のマリア】尾野真千子“マリア=りあ”と岩下志麻“桐江”がかもし出す「異様な空気感」は女優ならでは!
4月18日からスタートした尾野真千子と藤原季節がW主演するドラマ「まぐだら屋のマリア」(NHK)を見ながら身が凍りそうになった。それは今作の舞台が「尽果(つきはて)」という日本海に面した寂しい架空の漁村だからではない。「女優」という言葉を「俳優」に置き換えてはいけない人がいることを実感したからだ。尾野演じる通称・マリアこと本名・有馬りあと、岩下志麻演じる桐江怜子との対面シーンを見て、2人の「女優」が作り上げていた空気感の濃密さにゾッとしたのだ。
東京の有名料亭「銀華」で板前として働いていた紫紋(藤原)は、かわいがっていた後輩の板前・悠太(坂東龍汰)をあるトラブルから失う。自責の念に駆られた紫紋は、自分も命を絶とうと「尽果」にたどり着く。崖の上から身を投げようとする紫紋だったが、その崖っぷちに建つ「まぐだら屋」という食堂の煙と香りに引き寄せられ、引き戸を開けて入店。するとマリア=りあから「いらっしゃい。お腹減ってるでしょ?何か食べる?」と声をかけられ、それをきっかけに「まぐだら屋」で働かせてもらおうとするのだが、それには店のオーナー・桐江(岩下)の許可が必要だと説明される。
「決してアレに惚れぬこと」
マリア=りあと桐江の家を訪ねた紫紋だが、桐江はマリア=りあに「いね!(去れ、帰れの意)」と繰り返し、薬を飲もうとしていた桐江を見たマリア=りあが差し出した水をザッと払いのけ、尋常ではない雰囲気が漂う中、マリア=りあはそこから出て行ってしまう。残された紫紋は、食事をしていないと言う桐江に鮭のホイル焼きとみそ汁、浅漬けを10分で作って出し、桐江から「まぐだら屋」で働くことを許される。しかし1つだけ条件があると言われ「決してアレに惚れぬこと」と言い渡されるのだ。
マリア=りあと桐江に何かあることは明白なのだが、この2人がかもし出す「険悪なムード」は異様で、このムードは俳優ではなく女優にしかかもし出せないと思った。演技がどうこうでなく、2人が放つ濃密な空気感は画面を越えて伝わってきて、これは女同士でしか成立しない、女優でしか表現できない空気感だと感じたのだ。
原田マハ氏の同名小説が原作の今作。罪を負った者たちの「業と贖罪と再生」をベースに“命の重さ”を描いているというが、岩下も尾野も、何て「業(ごう)」という言葉が似合う女優なのだろうか。次回が楽しみなドラマで嬉しい限りだ。
(森山いま)
