向井理演じる東海郵船社長の長男・階堂彬は才能にあふれ、学歴・容姿・すべてにおいて人も羨む人生を歩んできた。生まれたときから決まっていた「東海郵船社長」という道、だけどその敷かれたレールを走ることに疑問を感じ、あえて産業中央銀行の「バンカー」という道を選んだ彬。その選択の一翼を担ったのは、かつての自分の家庭教師であった安堂章二の存在であろう。
安堂は二人の「アキラとあきら」が入行した産業中央銀行の人事部に勤務し、新人研修も担当している。ドラマはこの二人の「伝説」となる新人研修から幕を開けるが、原作者の池井戸潤氏は「10年前に書いたときは幼少期から始めたが、今なら二人の初対決となるこの研修から書く。ドラマはまさにそこからスタートしており、二人の対比がよくわかるのでは」と語る。
連載時から読んでいた読者が改めて今回の文庫本を読むと、実はカットされている部分があることに気が付くだろう。それはまさに安堂の過去だ。池井戸氏いわく「安堂はある意味『出来すぎた』人物だと思っていて、読者の反感を買うと思っていたのですが、演じてくださっている小泉孝太郎さんにまったくイヤミなところがなくて。ドラマは連載時の原稿をベースにして作ってあるのですが、本にしたときに削ったエピソードを、ドラマなりの味付けで見せてくれたのが良かったです。ドラマと小説にそれぞれ違うところがあるので、両方楽しんでいただけるのではないでしょうか。」とドラマの構成に太鼓判を押す。
向井も小泉について番組インタビュー動画で
「彬を演じる際に小泉さんのしぐさを観察していた」とも語っており、小泉のイヤミのないナチュラルな演技に注目だ。しかし池井戸ドラマでは味方と思っていた人物が実は…ということもあり得る。果たして小泉孝太郎演じる安堂章二は、彬にとって壁となるのか、それとも…?
連載、ドラマ、文庫本、それぞれの良さを最大限に活かしている「アキラとあきら」。ドラマと小説を見比べながら楽しむのがおすすめだ。
『アキラとあきら』
池井戸潤
徳間文庫 1000円(税別)
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