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グルメ
2025/02/09 18:14

【リレーエッセイ「ラブレター from 酒場」】生ホッピーに関する思い出/スズキナオ

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2025/02/09 18:14

 昨年のことですが、パリッコさんと久々に東京で飲む機会がありましたね。

 我々2人が揃って取材を受けるというありがたい機会で、先方から指定された場所が立石の酒場でした。立石といえば東京・葛飾区の繁華街で、昔ながらの名酒場が集中していることから、「のんべえの聖地」などと呼ばれる場所です。私も東京に住んでいた頃からよく飲みに行っていて、思い出深い街です。パリッコさんとハシゴ酒をしたこともありました。

 酒場めぐりの楽しみに目覚め、夢中になって都内の老舗酒場を飲み歩いていた頃、いつしか耳に入ってきたのが「生ホッピー」という言葉でした。ホッピービバレッジが製造・販売していて、関東の下町酒場で広く愛されているビールテイストの炭酸飲料が「ホッピー」で、主に甲類焼酎を割って飲むのですが、それに「生」があるという。

 酒場めぐりをするうちに私はホッピーがすっかり好きになって、ホッピーと焼酎とジョッキをそれぞれキンキンに冷やして飲む“三冷”という飲み方があるらしいと知ったり、普通のホッピーは白ホッピーとも呼ばれ、それに対して黒ホッピーがあったり、醸造に通常の倍の時間をかけた赤ホッピーという珍しいものまであると、そんな知識が増えていきました。

 そんな流れで、「サーバーから直に注ぐ生ホッピーというものがあり、それは限られた店でしか提供されていないらしい」という話を、半ば都市伝説かのように聞いたのでした。そうと聞けばどうしても飲んでみたくなり、立石にその生ホッピーを出す店があるというので行ってみたのは、もうかれこれ15年ほど前のことでしょうか。

 路地裏に店舗を構える「秀」という居酒屋が目的地で、そこでは生ホッピーと、黒生ホッピーと、ハーフ&ハーフが飲めるのでした。そこで飲んだ生ホッピーのおいしさはいまだに忘れられません。泡がクリーミーで、ホッピーの味わい自体も、別物かというほどまろやかで、深い甘みとコクがあって、それを冷えたジョッキでゴクゴク飲むと、知らない世界がパーッと目の前に開けたような感動がありました。もちろん黒生ホッピーもハーフ&ハーフもそれぞれにおいしく、いつも飲んでいる普通のホッピーもそれはそれでもちろん好きなのですが、この生にはかなわないという気がしました。

 それ以来、仕事をしていても秀の生ホッピーが飲みたくて仕方なくなってくるという、ある意味ちょっとヤバい状態が続いたのですが、たまに仕事が早く終わった時など、会社では見せない機敏な動きで立石へ直行し、生ホッピーを飲んでは極上の気分を味わっていました。

 しかし、立石駅周辺で大規模な再開発が行われることになり、その影響なのか、別の理由があったのかはわかりませんが、残念ながら秀は閉店してしまいました。私が最後に来店しようとした時、かなり情けないことなのですが、その前にもう1軒、別の店で酒を飲んでから行ったのですが、「別の店で飲んできた人はお断り」というルールがあったようです。立石でハシゴ酒をして羽目を外す人が多いのか、そういう決まりの店は割とあって入店がかなわず、それっきりになってしまいました。

 そんな最後だったこともあって、なおさら私は秀の生ホッピーが恋しいのです。ホッピービバレッジは東京の会社で、生ホッピーは通常の瓶入りよりも段違いに品質管理が難しいそうで、どうしても工場から提供できる地域が限られているのだといいます。そのため、私の住む関西では飲むことができないはずなのですが…先日、飲み仲間から「京都に生ホッピーを出す店がある」と聞きました。その真相を確かめに、近いうちに行ってこようと思います! というわけで次回のテーマは「今年こそ行こうと思っている店」でどうでしょう。

スズキナオ:東京生まれ、大阪在住のフリーライター。著書に「深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと」「家から5分の旅館に泊まる」他。「大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる」が2月下旬に発売予定。

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