20%以上の視聴率を誇っているものの、稚拙すぎる脚本と魅力に乏しいヒロイン像に悪評が噴出しているNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」。ドラマはクライマックスに差し掛かっているが、ここにきて提灯記事から一転、大手メディアも続々と批判的な記事を掲載するようになってきた。
「週刊朝日」9月23日号では、ドラマのモチーフとなった「暮しの手帖」の名編集長・花森安治氏の愛弟子、小榑雅章氏のドラマに対する批判的なインタビューが掲載された。実像とかけ離れた物語にとうとう堪忍袋の緒が切れた格好だ。
記事によると小榑氏は、8月15日の放送から「このドラマはフィクションです。登場する団体や商品は実在のものではありません」というテロップを入れてもらうように要請したと語っている(実際に挿入)。またドラマの出版指導から自身の名前を外させたというのだから尋常ではない。
ある月刊誌の編集長も怒りを露わにする。
「社名も人物名も家族構成も史実に沿ったものだし、史実どおりのエピソードについて描きながらもその本質はまったく違う。“モチーフ”を免罪符に何をしてもいいのかと怒りさえ覚えます。雑誌作りの工程も無茶苦茶で、視聴者に様々な誤解を与えたことでしょう。出版に関わる人間として許せない気持ちです」
視聴率的には「とと姉ちゃん」は成功の部類に入るのだろう。しかし、歴史ある朝ドラの黒歴史となることは間違いない。“モチーフ”となった「暮しの手帖」は、ドラマのような内容のない雑誌ではなかったことだけは声を大にして強調したい。
(笠原和美)